ECRS(改善の4原則)とは
ECRSとは、業務や作業を改善するときに、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(交換)、Simplify(簡素化)の四つの観点を、この順番で検討する考え方です。平易に言えば「まずやめられないかを考え、次にまとめられないか、順番や担当を入れ替えられないか、最後に簡単にできないかを考える」という改善の手順です。
四つの英単語の頭文字をとってECRSと呼ばれ、「イクルス」と読まれることもあります。もともとは製造業の生産現場で、作業の無駄を減らすために使われてきた手法ですが、現在では事務作業、サービス運用、システム開発の要件整理など、あらゆる業務の改善に使われています。
四つの原則と順番
| 順番 | 原則 | 問いかけ | 事務業務での例 |
|---|---|---|---|
| 1 | E:排除(Eliminate) | その作業をなくせないか | 誰も見ていない週次報告書をやめる |
| 2 | C:結合(Combine) | 複数の作業をまとめられないか | 二つの部署が別々に行っている同じ確認を一回にする |
| 3 | R:交換(Rearrange) | 順番・場所・担当を入れ替えられないか | 承認の前に形式チェックを行い、差し戻しを減らす |
| 4 | S:簡素化(Simplify) | もっと簡単にできないか | 入力フォームの項目を減らす、テンプレートを使う、自動化する |
この順番には意味があります。改善効果は一般に、E(排除)が最も大きく、S(簡素化)に向かうほど小さくなります。作業をなくせれば、その作業にかかっていた時間、ミス、管理の手間がすべてなくなります。一方、簡素化は作業そのものは残るため、効果は限定的です。
また、順番を逆にすると無駄が生まれます。本来はなくせる作業を先に簡素化・自動化してしまうと、そのための投資が無駄になります。ECRSが「改善の順番」として語られるのはこのためです。
実務での使い方・具体例
ある会社で、営業担当が毎週、案件の状況をExcelの報告書にまとめて上長に提出し、上長がそれを集計して部長に報告していたとします。この業務を自動化したいという相談があった場合、ECRSで考えると次のようになります。
- 排除:部長は週次報告のどの部分を見て、何を判断しているのか。使われていない項目や、そもそも不要な報告はないか
- 結合:営業担当が顧客管理システムに入力している情報と、報告書の内容が重複していないか。一本化できないか
- 交換:報告書を作ってから集計するのではなく、顧客管理システムのデータから直接集計できないか
- 簡素化:残った作業について、入力項目を減らし、集計と報告をダッシュボードで自動化する
いきなり「報告書の作成をRPAで自動化する」と考えると、不要な項目の作成まで自動化することになります。ECRSの順に考えると、報告書そのものをなくし、システムのデータから自動で状況を見られるようにする、というより根本的な改善にたどり着けます。
業務改善やシステム化の相談では、まず業務棚卸しで業務を一覧にし、業務フロー図で流れを描いたうえで、各作業にECRSの四つの問いを当てはめていく進め方が効果的です。システム開発の要件を決める段階で使えば、本当に必要な機能に絞り込むための道具にもなります。
問いかけを習慣にする
ECRSは、改善プロジェクトのときだけでなく、日々の業務の中でも使えます。新しい業務や手順を追加するとき、「これは既存の作業と結合できないか」「本当に必要か」を問う習慣を付けると、業務が少しずつ膨らんでいくのを防げます。会議の議題として、毎月一つの業務を選んで四つの問いを当てはめるといった運用も、手軽に始められる方法です。
よくある誤解と注意点
「ECRSは製造業の現場の手法で、事務やITには関係ない」というのは誤解です。むしろ、目に見えにくい事務作業やシステム運用こそ、使われていない報告書や重複した入力などの無駄がたまりやすく、ECRSの効果が出やすい領域です。
また、「排除」を検討するときは、その作業が担っていた本来の役割を確認することが欠かせません。一見不要に見える確認作業が、実は不正やミスを防ぐ重要な役割を担っていることもあります。作業をなくす前に、その目的と、なくした場合の影響を関係者と確認しましょう。
さらに、排除や結合は部署をまたぐことが多く、担当者一人では決められません。関係する部署の責任者を巻き込み、決める権限のある人と一緒に検討することが、ECRSを机上の議論で終わらせないコツです。
関連用語
- ムリ・ムダ・ムラ:ECRSで改善すべき問題を見つけるための観点
- 業務棚卸し:ECRSを当てはめる対象業務を洗い出す作業
- BPR:業務プロセスを根本から再設計する取り組み
- 業務標準化:改善後のやり方をそろえて定着させる取り組み
- ボトルネック:業務の流れ全体の速度を決めている詰まりどころ
Otsumuに相談できること
ECRSは社内でもすぐに使える考え方ですが、部署をまたぐ業務の排除や結合は、社内の関係者だけでは判断が難しいこともあります。Otsumuの自社サービス運用の自動化コンサルティングでは、業務の棚卸しからECRSによる見直し、残った業務の自動化までを一気通貫で支援します。
「自動化の前に、業務そのものを見直したい」という段階でも、30分の無料相談でお気軽にご相談ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01