NRR・GRRとは
NRRとGRRは、ある時点の既存顧客が一定期間後にどれだけ売上を維持しているかを示す指標です。新規顧客を除き、すでに契約している顧客だけを対象にします。
平たく言えば、「去年の顧客だけで、今年の売上は増えたか減ったか」を見るものです。NRRは増額やアップセルを含めて計算し、GRRは解約と減額だけを反映して増額を含めません。
NRRはNet Revenue Retention、GRRはGross Revenue Retentionの略で、日本語では売上継続率と訳されることがあります。ネットは増減を差し引きした後、グロスは減る方向だけを見る、という違いが名前の由来です。
仕組み・ポイント
両者は同じ顧客集団・同じ期間を対象にしますが、売上の扱いが異なります。
| 項目 | NRR | GRR |
|---|---|---|
| 増額・追加購入 | 含める | 含めない |
| 解約・減額 | 含める | 含める |
| 上限の考え方 | 基準を超えうる | 基準を超えない |
| 主に見るもの | 既存顧客からの成長力 | 既存契約の守りの強さ |
算出の流れは次の通りです。
- 期初に契約していた顧客を固定する。
- その顧客群の期初の継続売上を集計する。
- 期末時点の同じ顧客群の売上を集計する(NRRは増額込み、GRRは増額を除き期初額を上限にする)。
- 期末の額を期初の額で割る。
NRRが基準を超えていても、GRRが低ければ「一部の大口の増額が多数の解約を覆い隠している」可能性があります。両方を並べると、その構造が見えます。
実務での使い方・具体例
架空の月額課金サービスを想定します。昨年の期初に契約していた顧客だけを集め、今期末の売上と比べます。小規模の顧客は解約や減額が目立つ一方、上位プランへ移った顧客がいて、全体のNRRは悪くなかったとします。
しかしGRRを併せて見ると、小規模顧客の流出が続いていると分かります。この場合、上位プランの販売を続けるだけでなく、小規模顧客が最初の数か月で価値を実感できているか、導入時の支援が足りているかを確認する必要が出てきます。
運用では、顧客規模や契約プラン別に分けて月次で追い、解約理由の記録とセットで会議に出すのが基本です。新規事業の初期は顧客数が少なく、一社の動きで数字が大きく揺れるため、社数も併記して読みます。
よくある誤解と注意点
- NRRが高ければ事業は健全とは限りません。 増額が解約を補っているだけの場合があり、GRRとの差を見る必要があります。
- 期間と対象顧客の固定が必要です。途中で対象を入れ替えると、比較できなくなります。
- 契約形態によって、月次の継続売上を使うか、年換算を使うかが変わります。社内で定義を一つに決め、文書にしておきます。
- 顧客数が少ない段階では、割合そのものよりも個々の顧客の事情を丁寧に見るほうが学びになります。
関連用語
- チャーンレート(解約率):解約の発生を顧客数や売上で捉える関連指標。
- リテンション(継続率):顧客がどれだけ使い続けているかを見る考え方。
- MRR・ARR:継続売上を月・年で表す土台の指標。
- エクスパンション(アップセル・クロスセル):NRRを押し上げる増額・追加販売の取り組み。
- LTV(顧客生涯価値):継続の積み上げで顧客の生涯価値を見積もる指標。
- 関連する実践ノート:指標の定義を分母と期間まで含めてそろえる考え方をまとめています。
Otsumuに相談できること
NRRとGRRは、売上の定義や対象顧客の固定、増額と解約の区分けを誤ると、読み違いにつながりやすい指標です。 Otsumuでは、指標の定義づけや計測の整え方を KPI設計のご支援 としてご相談いただけます。まだ考えが固まっていない段階でも構いませんので、状況の整理から 30分の無料相談 をご利用ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.04