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転記作業をなくす:システム間の二重入力を解消する方法と手順

システム間の二重入力は、同じ情報をどこに入力しているかを洗い出し、項目ごとに正とするシステムを決めてから、連携やマスタ統合で解消します。洗い出しの表の作り方、方法の選び方、手順と失敗例までを解説します。

システム間の二重入力を解消するには、まず「同じ情報を、誰が、どのシステムに、何回入力しているか」を洗い出し、情報ごとに「どこで入力したものを正とするか」を決めることから始めます。そのうえで、正となるシステムから他のシステムへデータを流す連携を作るか、そもそも情報を一か所にまとめるマスタの統合を行います。連携の手段は、API連携、ノーコードの自動化ツール、CSVのファイル連携などから、業務の量と求められる確実さに応じて選びます。

転記作業は一件あたりの手間が小さいため、問題として扱われにくい作業です。しかし、毎日発生し、複数の人が行い、入力の誤りや食い違いが後工程のトラブルにつながるという点で、積み重なった負担は大きくなりがちです。加えて、二重入力が続いている環境では、どのシステムの情報が正しいのか誰も確信を持てない状態が生まれ、確認と修正の作業がさらに増えます。

この記事は、複数のシステムやExcelに同じ情報を入力している現場の責任者、業務改善やDXの担当者、情報システム担当者に向けて書いています。二重入力が生まれる理由、洗い出しの方法、解消の方法の選び方、進め方の手順、具体的な例、よくある失敗までを整理します。読み終えるころには、自社の転記作業のどこから手を付け、どの方法で解消すべきかが見えるはずです。

二重入力が生まれる理由と、放置したときの問題

二重入力は、多くの場合、誰かが意図して作ったものではありません。業務が増えるたびに必要なシステムやサービスを個別に導入し、それぞれがつながっていないまま使われているうちに、自然と生まれます。典型的な原因は次のとおりです。

  • 部署ごとに別々のシステムやサービスを導入した(営業は顧客管理、経理は会計、現場は独自のExcel)
  • システムを導入した時点では連携の手段がなかった、または連携の費用を後回しにした
  • 既存のシステムで足りない項目を補うために、Excelの管理表を別に作った
  • 取引先や上位の部署から決まった形式での報告を求められ、同じ内容を別の形式で入力し直している
  • 紙やFAX、メールで届いた情報を、複数のシステムに手で入力している

放置したときの問題は、作業時間だけではありません。入力のたびに誤りが入り込む余地があり、システム間で情報が食い違います。顧客の住所が営業のシステムと請求のシステムで違う、在庫の数が販売のシステムと倉庫の表で合わない、といった食い違いは、誤った発送や請求、在庫の欠品といった顧客に影響するトラブルにつながります。また、情報が食い違っていることが分かっていると、担当者はどの数字も信用できず、確認の作業がさらに増えます。

二重入力の洗い出し方

解消の第一歩は、どの情報がどこに重複して入力されているかを見える形にすることです。次の手順で洗い出します。

  1. 対象とする業務の範囲を決める。受注から請求まで、問い合わせから契約まで、採用から入社までのように、一つの業務の流れに絞る。
  2. その業務で使っているシステム、サービス、Excelのファイル、紙の帳票をすべて書き出す。
  3. 各システムに入力している情報の項目を書き出す。顧客名、住所、担当者、商品、数量、金額、日付などを項目の単位で並べる。
  4. 項目ごとに、どのシステムに入力しているかを一覧の表にまとめる。縦に情報の項目、横にシステムを並べ、入力している箇所に印を付ける。
  5. 印が複数ある項目について、誰が、いつ、何をもとに入力しているかを書き添える。
  6. 入力の頻度と一回あたりの時間、食い違いが起きたときの影響を記録する。

手順4で作る一覧の表は、二重入力を一目で把握できる強力な道具です。一つの項目に三つも四つも印が付いていれば、そこが解消の有力な候補になります。

情報の項目顧客管理販売管理会計ソフト現場のExcel入力の担当
取引先名・住所入力入力入力入力営業・事務・経理がそれぞれ
担当者の連絡先入力入力―入力営業・事務
受注の内容―入力―入力事務・現場
請求金額―入力入力―事務・経理

この表は架空の一般例ですが、多くの会社で似た形の重複が見つかります。特に取引先の情報のような基本的な情報は、ほとんどすべてのシステムで必要になるため、重複が最も起きやすい項目です。

解消の方法:連携・統合・入力の見直し

二重入力を解消する方法は、大きく分けて4つあります。

方法内容向いている場面
システム間の連携正となるシステムで入力した情報を、他のシステムへ自動で流すそれぞれのシステムを使い続ける必要があり、連携の手段がある
マスタの統合取引先や商品などの基本情報を一か所で管理し、各システムが参照する基本情報の重複が多く、食い違いが問題になっている
システムの統合複数のシステムの役割を一つのシステムにまとめるシステムの役割が重なっており、入れ替えの時期が来ている
入力の起点の見直し紙やメールで届く情報を、最初からデータとして受け取る外部から届く情報を手で入力している

システム間の連携

最も一般的な方法です。それぞれのシステムを使い続けながら、ある情報を一か所で入力すれば、他のシステムに自動で反映されるようにします。連携の手段には、APIを使った連携、ノーコードの自動化ツールやiPaaSを使った連携、CSVのファイルを出力して取り込む連携があります。手段の選び方はSaaS同士をつなぐ方法で詳しく比較しています。

連携で大切なのは、データを流す向きを一方向に決めることです。双方向に同期させると、両方で同時に変更されたときにどちらを優先するかの判断が必要になり、仕組みが複雑になります。基本は、正となるシステムから他のシステムへ一方向に流し、他のシステムでは該当の項目を編集しない運用にします。

マスタの統合

取引先、商品、社員といった、多くの業務で共通して使う基本情報をマスタデータと呼びます。マスタデータを一か所で管理し、各システムがそこを参照するようにすれば、基本情報の二重入力と食い違いをまとめて解消できます。統合の前には、各システムに散らばった情報の重複や表記の揺れを整理する作業が必要です。進め方はマスタデータ管理の進め方で解説しています。

システムの統合

複数のシステムの役割が重なっている場合は、一つのシステムにまとめることも選択肢です。たとえば、営業の顧客管理と事務の販売管理を一つの仕組みにまとめれば、受注の情報を二度入力する必要がなくなります。ただし、システムの入れ替えは影響が大きく、期間と費用もかかるため、既存のシステムの更新の時期や、業務の見直しの機会に合わせて検討するのが現実的です。

入力の起点の見直し

紙の注文書やFAX、自由な形式のメールで届いた情報を手で入力している場合は、情報が届く時点でデータにする工夫が有効です。取引先に入力フォームから注文してもらう、決まった形式のファイルで送ってもらう、AI-OCRで紙の帳票を読み取る、といった方法があります。入力の起点がデータになれば、その後の連携もしやすくなります。

方法を選ぶときの観点

4つの方法のどれを選ぶかは、一つの観点だけでは決まりません。重複している情報の量と更新の頻度、食い違いが起きたときの影響、使っているシステムの連携のしやすさ、システムの更新の時期、関係する部署の数を並べて判断します。たとえば、更新の頻度が低い情報であれば、月に一度のファイル連携でも十分なことがあります。逆に、受注や在庫のように刻々と変わる情報は、変更のたびに連携される仕組みでないと、食い違いの時間が長くなります。

また、一つの方法だけで解消する必要はありません。取引先の情報はマスタを統合し、受注の情報はシステム間で連携し、外部から届く注文は入力フォームに切り替える、というように、情報の種類ごとに方法を組み合わせるほうが、無理のない形に落ち着くことが多くあります。

正とするシステムを決める考え方

どの方法を取る場合も、情報ごとに「どこを正とするか」を決めることが解消の土台になります。決めるときは、次の観点で考えます。

まず、その情報が最初に生まれる場所です。取引先の情報であれば、最初に接点を持つ営業の顧客管理で生まれることが多く、受注の情報であれば販売管理で生まれます。情報が生まれる場所を正にすると、入力の流れが自然になります。

次に、その情報の正しさに責任を持つ部署です。たとえば、請求先の住所や支払条件は、経理が正しさに責任を持つことが多いでしょう。情報が生まれる場所と責任を持つ部署が異なる場合は、どちらを正にするかを関係部署で合意します。項目によって正とするシステムを分けることもできます。取引先名と担当者の連絡先は顧客管理を正とし、請求先の住所と支払条件は会計を正とする、といった形です。

決めた内容は、一覧の表として文書に残し、関係部署で共有します。正としないシステムで該当の項目を編集しないことも、あわせて運用のルールにします。

正とするシステムが決まると、その項目を誰が更新するかも自然に決まります。担当の部署が変更の連絡を受け付ける窓口となり、他の部署は変更があれば窓口に依頼する、という流れにしておくと、情報を直したい人が自分の使っているシステムで直接書き換えてしまう事態を防げます。

二重入力を解消する進め方の手順

洗い出しから解消までの進め方を、手順としてまとめます。

  1. 対象業務の範囲を決め、システムと入力項目の一覧の表を作る。
  2. 重複している項目ごとに、入力の頻度、時間、食い違いの影響を評価し、解消の優先順位を付ける。
  3. 優先度の高い項目について、正とするシステムを決め、関係部署で合意する。
  4. 解消の方法(連携、マスタの統合、システムの統合、入力の起点の見直し)を選ぶ。
  5. 既存のデータの重複や表記の揺れを整理する。連携を始める前に、各システムの情報を正のシステムの内容にそろえる。
  6. 連携の仕組みを作り、少量のデータで試す。連携が失敗したときの通知とやり直しの方法も用意する。
  7. 正としないシステムで該当の項目を編集しないよう、画面の設定や運用のルールを整える。
  8. 一定期間、連携の結果と手作業の結果を比べ、問題がないことを確かめてから手作業をやめる。
  9. 業務やシステムが変わったときに、一覧の表と連携の設定を更新する担当を決める。

手順5のデータの整理は、見落とされがちですが重要です。各システムで同じ取引先が少しずつ違う名前で登録されていると、連携しても正しく対応付けられず、新たな重複を生みます。どの業務から手を付けるかの評価の方法は自動化すべき業務の見つけ方も参考になります。

具体例:営業・事務・経理の三重入力を解消した場合

架空の一般例として、従業員数十名の専門サービス会社で、取引先と受注の情報を三重に入力していた場面を考えます。営業は顧客管理のサービスに取引先と商談の情報を入力し、受注が決まると事務が販売管理のシステムに取引先と受注の内容を入力し直し、経理は会計ソフトに取引先と請求の情報を入力していました。取引先の住所や担当者が変わったときに、三つのシステムのうち一つだけが更新され、請求書が古い住所に送られるといったことが起きていました。

まず、三つのシステムの入力項目を一覧の表にし、重複を洗い出しました。そのうえで、取引先名と担当者の連絡先は顧客管理を正とし、受注の内容は販売管理を正とし、請求先の住所と支払条件は経理が管理する会計ソフトを正とする、と関係部署で合意しました。

次に、三つのシステムに登録された取引先の情報を突き合わせ、表記の揺れや重複を整理しました。整理した後、顧客管理で商談が受注になると、取引先と受注の情報が販売管理に自動で登録される連携を作りました。販売管理で請求が確定すると、請求の情報が会計ソフトに連携されます。請求先の住所と支払条件は会計ソフトで管理し、販売管理からは参照だけを行う形にしました。

営業と事務には、正としないシステムでは該当の項目を編集しないルールを伝え、画面上も編集できない設定にしました。連携が失敗したときには、事務のチームのチャットに通知が届きます。

結果として、受注のたびに発生していた転記の作業がなくなり、情報の食い違いによる請求先の誤りも起きにくくなりました。この例のポイントは、連携を作る前に、項目ごとに正とするシステムを合意し、既存のデータを整理したことにあります。

よくある失敗とチェックリスト

よくある失敗と避け方

正とするシステムを決めずに連携を作る。 双方向に同期させた結果、どちらの情報が正しいか分からなくなります。項目ごとに正を決め、一方向に流します。

既存のデータを整理せずに連携を始める。 表記の揺れや重複がそのまま連携され、新たな重複を生みます。連携の前に、データをそろえます。

連携の失敗に気づけない。 連携が止まっていることに気づかず、片方のシステムの情報だけが古くなります。失敗の通知と、定期的な確認の担当を決めます。

運用のルールを決めない。 連携を作っても、正としないシステムで誰かが情報を直接書き換えると、食い違いが再び生まれます。編集の権限や画面の設定で防ぎます。

一度にすべてを解消しようとする。 対象を広げすぎると、関係部署の合意に時間がかかり、進みません。影響の大きい項目から、一つずつ解消します。

解消に着手する前のチェックリスト

  • 対象業務の範囲を決め、システムと入力項目の一覧の表を作ったか
  • 重複している項目ごとに、頻度、時間、食い違いの影響を評価したか
  • 項目ごとに正とするシステムを決め、関係部署で合意したか
  • 解消の方法(連携、統合、入力の起点の見直し)を選んだか
  • 既存のデータの重複と表記の揺れを整理したか
  • 連携の失敗時の通知とやり直しの方法を決めたか
  • 正としないシステムで編集しない運用と設定を整えたか
  • 一覧の表と連携の設定を更新する担当を決めたか

よくある質問

Q. 連携の手段がないシステムを使っています。二重入力は解消できませんか?

APIがなくても、CSVなどのファイルの出力・取り込みの機能があれば、ファイルを介した連携ができます。それも難しい場合は、画面操作を自動化する方法もありますが、画面の変更で止まりやすいため、暫定的な手段と考えます。システムの更新の時期に合わせて、連携しやすいシステムへの入れ替えを検討することも選択肢です。

Q. Excelの管理表が二重入力の原因になっています。どうすればよいですか?

まず、その管理表がなぜ作られたのかを確認します。既存のシステムで足りない項目を補っているのであれば、システム側に項目を追加できないか、または管理表の内容を業務システムに移せないかを検討します。管理表をなくすことが難しい場合でも、システムから自動で出力したデータで管理表を作るようにすれば、手での入力はなくせます。

Q. 連携とシステムの統合は、どちらを選ぶべきですか?

それぞれのシステムが業務に合っていて、使い続けたい理由があれば連携を選びます。システムの役割が重なっている、どれも古くなっていて入れ替えの時期が近い、という場合は統合を検討します。統合は影響が大きいため、まず連携で二重入力を解消し、入れ替えの時期に統合を検討する、という段階的な進め方も有効です。

Q. どの項目から解消すればよいですか?

入力の頻度が高く、食い違ったときの影響が大きい項目から始めます。多くの場合、取引先や顧客の基本情報と、受注や売上の情報が候補になります。最初の一つで効果が出ると、関係部署の協力も得やすくなります。

Otsumuに相談できること

重複している項目が少なく、使っているサービスがノーコードの自動化ツールに対応していれば、この記事の手順で一覧の表を作り、正とするシステムを決めて、社内で連携を作るだけでも十分に転記の作業を減らせます。まずは対象業務を一つ選び、入力項目の一覧の表を作るところから始めてみてください。

一方で、関係する部署やシステムが多く、正とするシステムの合意が難しい、既存のデータの重複や表記の揺れが大きい、連携の手段がない古いシステムが含まれている、といった状況では、業務とシステムの両方を見られる外部の力を借りたほうが、手戻りなく進められます。特に、どこを正とするかの設計を誤ると、連携を作っても食い違いが残り続けます。

Otsumuは、入力項目の洗い出しと正とするシステムの整理から、連携・マスタの統合・システムの統合のどれを選ぶかの判断、連携の開発と運用の改善までを一気通貫で支援しています。業務全体の自動化の進め方は自社サービス運用の自動化コンサルティングで、システム間の連携の開発はAPI連携開発で、複数のシステムの役割をまとめる場合は業務システム開発でご相談いただけます。費用は範囲に応じて個別にお見積もりします。

どこに二重入力があるかを整理したい、という段階でも構いません。まずは30分の無料相談で、使っているシステムと業務の流れをお聞かせください。

この記事について

Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。法務・税務・会計などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01

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