結論:支援会社の選定より先に、社内の四つの前提を固める
大企業の新規事業部や事業開発部が外部の支援を使うとき、つまずく場所は支援の中身よりも、社内の手続きと調整にあることがあります。支援会社と話が進んでから、決裁に時間がかかる、秘密保持の条件で法務の確認が長引く、成果物の権利で合意できない、既存事業の部門から待ったがかかる、といった形で止まります。
これらは、支援会社を探し始める前に、社内で方針を決めておける事柄です。具体的には次の四つです。
- 社内決裁:誰が、どの金額まで、どの資料で決められるか
- 秘密保持:何を外部に見せてよく、何を見せてはいけないか
- 成果物の扱い:支援の結果として残るものを、誰が持ち、どう使えるか
- 既存事業との調整:顧客、販売経路、ブランドに関わる場面で、誰の了解が必要か
この四つが決まっていると、支援会社との最初の面談で具体的な条件の話ができ、開始までの期間が短くなります。
外部支援に任せることと、社内に残すこと
四つの前提の前に、そもそも何を外部に頼むのかを整理します。大企業の新規事業で外部支援が役立ちやすいのは、次のような場面です。
- 構想を、検証できる仮説と判断基準に整理する作業
- 顧客候補への聞き取りや、テストマーケティングの設計と実施
- 検証用のシステムを、社内の開発体制を待たずに小さく作ること
- 経営会議や稟議に向けて、論点と根拠を第三者の視点で点検すること
一方で、社内に残すべきものがあります。続けるか止めるかの判断、顧客との関係、検証から得た学びの蓄積です。判断の材料づくりは外部に頼めても、判断そのものを外部に預けると、支援が終わったあとに事業を前へ進める人がいなくなります。支援会社との打ち合わせに、社内の責任者が毎回出席し、その場で決められる体制を用意してください。
社内ベンチャー制度や社内公募から生まれた案件の支援を外部に頼む場合も同じです。起案者が自分で顧客に会い、自分で判断する経験を積めるよう、支援の役割を「代わりにやる」ではなく「進め方を整え、足りない部分を補う」に置きます。
社内決裁:金額と期間を区切り、判断の場を先に決める
大企業では、外部への発注に稟議や購買の手続きが必要になり、金額によって決裁者と必要な資料が変わることがあります。新規事業の支援は成果が不確実なため、大きな金額を一度に通そうとすると、説明が難しくなります。
進めやすいのは、段階を区切り、段階ごとに目的、成果物、期間、金額、次に進む条件を明示する形です。
- 最初の段階は、構想の整理と検証計画づくりに絞り、短い期間と小さい金額で発注する。
- その成果物をもとに、次の段階である顧客検証や検証用システムの開発に進むかを判断する。
- 次の段階の稟議では、前の段階の成果物を根拠資料として使う。
この形にすると、決裁者にとっては一度に負う不確実性が小さくなり、担当者にとっては次の稟議の材料が手に入ります。稟議の論点の絞り方は経営陣が判断できる論点へ絞る稟議、段階ごとの審査の設計はステージゲートを次の実験を決める場にするで扱っています。
あわせて、購買部門の取引先登録や与信の手続きに必要な期間を、早めに確認しておきます。新しい取引先との契約には、社内の手続きに想定以上の時間がかかることがあります。
秘密保持と成果物の扱い
秘密保持では、契約書の文言より前に、社内で情報の区分を決めます。新規事業の構想そのもの、既存事業の顧客情報、未公開の技術や提携の情報では、外部に見せてよい範囲が違います。
- 支援に必要な情報を洗い出し、区分ごとに、見せてよい相手と方法を決める
- 顧客情報や個人情報は、原則として渡さずに済む進め方を先に考える
- 支援会社が再委託をする場合の扱い、AIなど外部のサービスに情報を入力する場合の扱いを確認する
- 支援会社が同じ業界の他社を支援している場合の情報の隔て方を確認する
- 契約の終了後に、渡した情報をどう返却・削除するかを決める
成果物の扱いでは、次の点を契約の前に確認します。
- 報告書、調査の記録、聞き取りの記録、設計書、ソースコードのそれぞれについて、権利がどちらに帰属するか
- 支援会社が持ち込んだ既存のひな形や部品が含まれる場合、自社はそれをどの範囲で使えるか
- 成果物を、グループ会社や、後続の別の委託先に渡してよいか
- 支援会社が、この案件の支援をした事実を外部に公表してよいか
- 検収の基準。何がそろえば完了とするか
契約条項の具体的な文言や法的な効力は個別の判断になるため、自社の法務部門や専門家に確認してください。担当者の役割は、事業として何が必要かを法務に正確に伝えることです。検証段階の契約の考え方はPoC契約で検証の終わりと次の段階を決めておくにまとめています。
既存事業との調整
大企業の新規事業では、既存事業との関係が、外部支援の進み方にも影響します。支援会社が顧客候補への聞き取りを設計しても、既存事業の部門の了解がなければ、既存の顧客に接触できません。
- 聞き取りや実証の対象に既存事業の顧客が含まれるかを確認し、含まれる場合は担当の営業部門と、接触の方法と伝える内容を事前に決める
- 新規事業が既存事業の売上に影響しうる場合は、その論点を隠さず、経営側に判断を求める
- 自社のブランド名を出して検証するか、出さずに検証するかを決める。出す場合は、広報やブランドの管理部門への確認が必要かを社内で確かめます
- 他社との協業や、いわゆるオープンイノベーションの形を取る場合は、双方が何を得るのか、検証のあとの契約をどうするのかを先に話す
協業の進め方は協業の開始前に双方の成果と次の契約を決めるで扱っています。これらの調整は社内の人にしかできません。支援会社に任せられるのは、調整に使う資料を整えるところまでです。
よくある質問
Q. 大手の支援会社と小規模な支援会社では、どちらが合いますか。
規模よりも、実際に担当する人が誰で、どの作業をどこまで行うのかで判断するほうが確実です。提案の場に来た人と、実務を担当する人が同じかどうか、成果物の見本を見せてもらえるか、自社の決裁の区切りに合わせた段階的な契約ができるかを確認します。
Q. 支援を受けても、社内に知見が残らないのではと心配です。
社内の担当者が作業に参加する形にし、検証の設計、聞き取りの記録、判断の経緯を成果物として受け取る契約にします。報告書だけを受け取る形だと、なぜその結論になったのかが社内に残りません。
Q. 社内ベンチャー制度の事務局として、起案者の支援を外部に頼みたいのですが。
起案者ごとに段階が違うため、一律の研修よりも、段階に応じた個別の支援のほうが合うことがあります。事務局としては、支援の範囲、起案者の稼働、次の審査で見る内容を先に決め、支援会社にはその審査の基準を共有します。
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Otsumuは、新規事業開発コンサルティング、AIを活用したMVPシステム開発、自社サービス運用の自動化コンサルティングを、戦略と開発を分断せず、ひとつのチームで行っています。段階を区切った最初の一歩としては、新規事業レビュー Sprintが対応します。成果物は、市場・競合の論点整理、顧客と課題の仮説シート、収益モデルの整理、優先する検証項目と判断基準、PoCの計画案、経営会議・社内稟議用の説明資料です。参考価格は48万円(税別)、期間は1〜2週間で、大規模な市場調査、顧客インタビューの実施、システム開発は別途見積もりとなります。秘密保持、成果物の取り扱い、契約・検収の条件は、相談時に確認のうえ合意します。正式な見積もりは相談後です。
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この記事について
Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。記載の価格はOtsumuの税別・参考価格で、正式なお見積もりはご相談後にご案内します。法務・税務・会計・補助金などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.21