← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

Best Buy「マーケットプレイスと広告・サービス」に学ぶ家電小売の事業設計

米国の家電小売Best Buyが、在庫を持たない手数料収入の第三者販売や広告、会員サービスをどう積み上げているかを、Form 10-K(2026年1月期)の記載から読み解き、小売の収益の層の作り方を学びます。

分類:企業事例 › 小売・EC

この事例の要点

  • Best Buyは、家電や関連サービスを店舗とオンラインで販売する米国の小売企業で、2026会計年度(2026年1月31日終了)の売上は41.7十億ドルでした(Form 10-K、FY2026)。
  • 同社は2026会計年度にBest Buy Marketplaceを米国で立ち上げ、「在庫投資なしで新たな手数料収入と広告収入を生む可能性がある」と説明しています(Form 10-K、FY2026)。
  • サービス区分の売上には、広告、マーケットプレイス手数料、会員サービス、修理、設置などが含まれ、商品販売の外側に収益の層を重ねる設計になっています(Form 10-K、FY2026)。

どんな事業か

Best Buy Co., Inc.は米国に本社を置き、ニューヨーク証券取引所に上場する小売企業です。2026年1月31日時点で、国内(米国)に926店、カナダを中心とする国際に142店、合計1,068店を運営しています。国内セグメントはBest Buy、Geek Squad、Best Buy Health、Best Buy Ads、Best Buy Marketplaceなどのブランドを含み、店舗、オンライン、顧客の自宅への訪問を組み合わせたオムニチャネルで事業を行うと説明されています(Form 10-K、FY2026)。

売上のカテゴリは、コンピューティングとモバイルフォン、家電(コンシューマーエレクトロニクス)、アプライアンス、エンターテインメント、サービス、その他に分かれます。サービスには広告、配送、ヘルス関連サービス、設置、マーケットプレイス手数料、会員サービス、修理、設定、技術サポート、ワランティ(製品の保守)関連サービスが含まれます(Form 10-K、FY2026)。

収益の仕組み

収益は、商品の販売を土台にして、その周りにサービスと手数料の層を重ねる構造として読めます。

  • 入り口:店舗とオンラインでの商品販売。オンライン売上は13,166百万ドルで、国内売上の34.4%でした(Form 10-K、FY2026)。
  • 課金:商品の粗利に加え、広告(Best Buy Ads)、第三者販売の手数料(Best Buy Marketplace)、設置・修理・技術サポートなどのサービス料を得ます。
  • 継続:My Best Buy PlusとMy Best Buy Totalの会員サービスは、契約期間が1か月から1年で、代金は契約期間の開始時に支払われるのが通例と説明されています(Form 10-K、FY2026)。
  • 金融:国内売上の約25%が同社ブランドのカードで決済され、提携銀行とのプロフィットシェア収入は国内売上の約1.2%でした(Form 10-K、FY2026)。

数字で確かめる

  • 総売上:41,691百万ドル(前期41,528百万ドル)で、既存店売上は0.5%増でした(Form 10-K、FY2026)。大きな成長ではなく、横ばいに近い市場で事業を組み替えていることが読み取れます。
  • 国内のサービス売上:2,466百万ドル(前期2,456百万ドル)で、国内売上38,278百万ドルに対して約6.4%です(Form 10-K、FY2026)。商品が中心の売上のうち、サービスは一桁台の割合でも安定した層をつくっていることが読み取れます。
  • 国内の粗利率:前期とほぼ変わらず、商品の粗利率の低下をサービス区分の改善と、Best Buy Adsの成長がほぼ相殺したと説明されています(Form 10-K、FY2026)。広告が粗利率を支える役割を持ち始めていることが読み取れます。
  • 営業利益:1,389百万ドル(売上比3.3%)で、前期は1,262百万ドル(同3.0%)でした(Form 10-K、FY2026)。売上がほぼ横ばいでも、費用と収益構成の調整で利益率を上げていることが読み取れます。
  • 店舗数:国内は926店で、前期の957店から減っています(Form 10-K、FY2026)。店舗を増やさず、既存の接点から得る収益を広げる方向にあることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例の核心は、商品を売る小売が持つ「来店・来訪」という資産を、商品以外の収益に変換している点にあると読めます。同社が自ら述べるとおり、マーケットプレイスは在庫投資なしで手数料と広告を生む可能性があります。自社で仕入れる商品の幅には限りがありますが、第三者の売り手が加われば、品ぞろえの幅は広がり、広告の掲載面も増えます。

一方で、この設計には条件がありそうです。10-Kのリスク記載には、マーケットプレイスの商品が品質・安全・規制の基準を満たさなければ信頼を損なうこと、商品責任や知的財産に関する法令が未整理であることが挙げられています。手数料と広告の収益を伸ばすには、第三者販売の品質管理という新しい仕事を持つ必要があり、それが信頼で選ばれてきた小売の強みを守る前提になると考えられます。

もう一つの注目点は、会員サービスやGeek Squadのように、商品を買った後の「困りごと」に対価をもらう層です。商品の価格競争が厳しくなっても、設置・修理・サポートは別の理由で選ばれるため、商品の値引きに頼らずに顧客との接点を収益に変えられると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の主力商品の周りに、購入前後の「困りごと」を引き受けて対価をもらえるサービスはありますか。
  • 自社が持つ来訪者や顧客との接点を、他社の商品や広告の掲載面として使う余地はありますか。
  • 在庫や仕入れを持たずに、品ぞろえや提案の幅を広げられる提携先はありますか。

小さく試すなら

  1. 過去1年の顧客からの問い合わせを集め、購入後に最も多く発生した困りごと(設置・設定・修理・使い方)を3つ書き出します。
  2. そのうち1つについて、料金と提供内容を決めた単発のサービスとして、既存顧客に2〜4週間案内します。
  3. 自社の商品と相性のよい他社の商品を3〜5点選び、自社サイトまたは店頭で紹介し、成約時に手数料を受け取る形を試します。
  4. 申込数、紹介からの成約数、問い合わせの増減を確認し、続けるサービスと提携先を絞ります。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Best Buy Co., Inc. / Best Buy Marketplace・Best Buy Ads・サービス。参照資料:Form 10-K(2026会計年度、2026年1月31日終了)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗