この事例の要点
- 株式会社クラウドワークスは、フリーランス人材を中心とした人材マッチングサービスとDX・AIソリューションを展開し、2025年9月末時点の登録ユーザー数は743.8万人(前年同期比+71.6万人)、登録クライアント数は107.2万社(同+6.6万社)です(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 2025年9月期の連結売上高は22,657,413千円(前年同期比32.4%増)、営業利益は1,759,112千円(31.2%増)でしたが、のれんの減損損失1,075,141千円等により親会社株主に帰属する当期純損失は257,066千円でした(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- セグメントはマッチング事業(売上高21,439,733千円)とビジネス向けSaaS事業(売上高1,097,963千円)の2つで、売上の大半をマッチング事業が占めます(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
株式会社クラウドワークスは、「個のためのインフラになる」をミッションに掲げ、フリーランス人材を中心とした人材マッチングサービス及びDX・AIソリューションを展開していると説明しています(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
主軸のマッチング事業は、「主要事業として引き続き安定的に推進」しているとする一方、エンジニア市場のニーズの変化や企業のオフィス回帰の影響により、一部案件で人材需要の変化がみられると説明しています。2024年に子会社化した株式会社インゲートおよび株式会社CLOCK・ITを統合して株式会社クラウドワークス コンサルティングを発足させ、2025年9月期にはコンサルタント10名を採用しました(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
ビジネス向けSaaS事業では、従業員の工数を可視化する生産性向上SaaS「クラウドログ」を大企業や成長企業を中心に導入し、工数データを元にコンサルティングや開発・RPAによるDX化を提案するとしています(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
売上は、マッチング事業とビジネス向けSaaS事業の2つのセグメントから得ています。マッチング事業は売上高21,439,733千円(前年同期比32.1%増)、セグメント利益1,759,453千円(30.2%増)で、ビジネス向けSaaS事業は売上高1,097,963千円(42.8%増)、セグメント利益53,933千円(前年同期はセグメント損失71,463千円)でした。同社は中期経営目標「YOSHIDA300」として売上高300億円、EBITDA(Non-GAAP)25億円を掲げています(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
費用については、今回参照した公開資料には売上原価や販売費の内訳は示されていません。ただし、営業活動によるキャッシュ・フローの内訳から、のれん償却費550,966千円、減損損失1,075,141千円が当期の損益に含まれていたことが分かります(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上高22,657,413千円(前年同期比32.4%増)、売上総利益9,566,824千円(21.9%増)、営業利益1,759,112千円(31.2%増)(2025年9月期)(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上総利益の伸びが売上の伸びを下回っていることが読み取れます。
- 親会社株主に帰属する当期純損失257,066千円(前年同期は910,756千円の純利益)、のれんの減損損失1,075,141千円(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。のれんの評価見直しが最終損益を左右したことが読み取れます。
- 総資産15,690,790千円、純資産6,746,063千円、自己資本比率40.7%(前期50.8%)、長期借入金の増加2,713,563千円(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。借入で子会社取得の資金を賄い、財務の余裕が縮んだことが読み取れます。
- 2026年9月期の業績予想は売上高20,000百万円(前年比11.7%減)、営業利益△1,000百万円~0百万円、EBITDA(Non-GAAP)△350百万円~650百万円(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。翌期は減収と幅の広い損益の見通しが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「クラウドソーシング」と「人材派遣・技術者派遣」の2つの型で読むと整理しやすいと考えられます。クラウドソーシングの型では、743.8万人の登録ユーザーと107.2万社の登録クライアントという両側の規模が資産で、両側の登録が増え続けていることは、場としての集客が続いていることを示すと読めます。
一方、「エンジニア市場のニーズの変化や企業のオフィス回帰の影響により一部案件で人材需要の変化」という説明からは、売上の中心が単発の仕事の仲介にとどまらず、エンジニアなどの人材を企業の案件に継続的に供給する型に近いと考えられます。この型では、企業の働き方や求めるスキルの変化が需要に直結します。コンサルタント10名を採用し、M&Aで得たDXの知見と自社の人材を組み合わせる方針は、単価の高い領域へ供給を移す試みと読めます。
トレードオフは、M&Aで事業を重ねる速さと、のれんの重さです。当期は営業利益が31.2%増えながら、のれんの減損損失で純損失となりました。翌期の予想も売上高11.7%減、営業損益は△1,000百万円~0百万円と幅があります。資料には減収の理由は示されていませんが、既存事業とDXコンサル事業の拡大を同時に進める局面で、見通しが定めにくい状態と考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の仲介事業で、売上は「成約の件数」と「継続的な供給」のどちらから主に生まれているか。
- 供給側のスキルや品質を高める仕事を、誰がどの費用で担っているか。
- 買収で事業を広げるとき、のれんの評価が下がる条件を事前に決めているか。
- 需要側の働き方や調達方針の変化を、どの指標で早めに察知できるか。
小さく試すなら
- 直近1年の売上を「単発の成約」と「継続的な契約」に分け、それぞれの粗利率を出す。
- 需要側の顧客10社程度に、いま求めているスキルや契約形態の変化を聞き取り、供給側の登録者の属性と照らし合わせる。
- ギャップの大きい領域を一つ選び、供給側の育成や外部人材の組み合わせで応える提案を2〜4週間で試す。受注単価と粗利率が既存より高ければ、注力領域として投資判断に進む。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社クラウドワークス / クラウドソーシング「クラウドワークス」(マッチング事業)。参照資料:2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27