この事例の要点
- DigitalOceanは、仮想サーバー(Droplets)、ストレージ、マネージドデータベース、AI向けGPUなどを提供するクラウド事業者です。料金は主に利用量に応じた従量制で、多くの顧客が月単位で利用しています(Form 10-K、FY2025)。
- 顧客の獲得は、同社が「非常に効率的」と呼ぶセルフサービス型が中心です。内勤営業、外勤営業、パートナーが補っています(Form 10-K、FY2025)。
- 月に500ドル超を使う「デジタルネイティブ企業(DNE)」の顧客が、売上の60%を占めています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
DigitalOcean Holdings, Inc.は、NYSEに上場する米国企業です(ティッカー DOCN)。自社を、AIとデジタルネイティブ企業向けの「エージェント型推論クラウド」プラットフォームと説明し、使命は、事業者が知的なアプリケーションを「作り、動かし、広げる」のを、スピードと分かりやすさ、予測しやすい経済性で支えることだとしています(Form 10-K、FY2025〔2025年12月31日終了年度〕)。
製品は三つの層で説明されています。IaaS(Droplets、Spaces、Volumes、ネットワーク、バックアップ)、PaaS/SaaS(マネージドホスティング、マネージドデータベース、マネージドKubernetes、App Platform、Functions、Marketplace)、AI/ML(Gradient AIとして、GPU Droplets、Gradient AIプラットフォーム、ベアメタルGPU、Jupyter Notebooks)です。2025年12月31日時点の従業員は1,462人で、うち848人が米国外にいます(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
- 入り口:同社の説明では、セルフサービスの顧客獲得モデルが過去に売上の大きな部分を生み出してきました。利用者は自分で登録し、すぐに使い始められます。
- 課金:価格は主に消費ベースです。一部の顧客は、最低利用額を約束するコミットメント契約を結びます。
- 継続:顧客の利用量が増えると収益が増える構造です。同社は、年間換算の経常収益(ARR)や、純ドルリテンション(NDR)といった指標を開示しています。
数字で確かめる
- FY2025の売上高は901.4百万ドルで、前年の780.6百万ドルから15%増でした。売上総利益は539.6百万ドルで、粗利率は約60%です(Form 10-K、FY2025)。従量制のクラウドで、売上が二桁で伸びていることが読み取れます。
- ARRは2023年が723百万ドル、2024年が820百万ドル、2025年が970百万ドルでした。NDRは2024年の98%から2025年に100%へ上がっています(Form 10-K、FY2025)。既存顧客の利用が、全体としては縮まず、横ばいから拡大に転じていることが読み取れます。
- DNE顧客は2025年12月31日時点で約21,000社(前年は約18,000社)で、売上の60%を占め、DNEの売上は24%増でした(Form 10-K、FY2025)。月額500ドル超を使う中核層が増え、売上の伸びを引っ張っていることが読み取れます。
- 売上の地域別内訳は、北米38%、欧州28%、アジア23%、その他11%でした。上位25顧客の売上比率は、2025年10%、2024年8%、2023年7%です(Form 10-K、FY2025)。海外の比率が高く、上位顧客への依存は高まりつつも一桁後半〜10%の水準にあることが読み取れます。
- 純利益は259.3百万ドル(前年は84.5百万ドル)でした。これには52.6百万ドルの法人税の利益が含まれ、その要因は、米国の繰延税金資産の評価引当金69.9百万ドルの解除だと記載されています(Form 10-K、FY2025)。純利益の増加には、税務上の要因が含まれていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、従量課金とセルフサービスを組み合わせた型だと読めます。利用者は、小さく始めて、成長に合わせて利用量を増やせます。提供側は、営業人員を増やさずに、利用が伸びた顧客から収益を得られます。入り口の費用が低く、顧客の成長がそのまま収益になる設計です。
一方で、従量課金は、顧客が小さく使い続ける限り、収益が伸びにくい面もあります。NDRが98%から100%の水準にあることは、既存顧客の中に、利用を減らす層と増やす層が混在していることを示すものと、Otsumuは見ます。資料はNDRの内訳を示していないため、ここは推測の域を出ません。
自社の事業に置き換えるなら、セルフサービスで入り口を広げたあと、「どの利用額を超えた顧客に、個別の対応をするか」を決めておくことが論点です。同社が月500ドル超という線で顧客層を分けて見ているのは、その一例です。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社のサービスは、営業を介さず、顧客が自分で申し込んで使い始められるか?
- 利用量に応じた料金にした場合、小さく使う顧客と大きく使う顧客で、収益はどう分かれるか?
- 個別の対応を始める基準(利用額や利用規模)を、数字で決めているか?
小さく試すなら
- 既存顧客を月間の利用額で並べ、上位の顧客が売上の何%を占めるかを出す。
- 新規の申し込みから初回の利用までの手順を書き出し、営業の介在が必要な箇所を洗い出す。
- 利用額の線(たとえば月額の閾値)を一つ仮置きし、線を超えた顧客と超えない顧客で、対応の違いと費用を試算する。
- 線を超えた顧客数社に、追加の機能や支援の要望を聞き取り、次の提案の叩き台を2〜4週間でまとめる。
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資料の位置づけ
企業・サービス:DigitalOcean Holdings, Inc.のクラウドプラットフォーム。参照資料:Form 10-K(FY2025、2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25