分類:企業事例 › 機械・素材・航空宇宙
この事例の要点
- 株式会社荏原製作所は、建築・産業、エネルギー、インフラ、環境、精密・電子の5つの事業セグメントで業績を開示しています(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 2025年12月期の受注高は9,496億83百万円(前期比10.4%増)、売上収益は9,582億85百万円(同10.6%増)、営業利益は1,138億2百万円(同16.2%増)で、いずれも過去最高額を更新したと説明されています(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 決算短信は各セグメントの事業概況で、製品の受注とは別に、サービス&サポート、アフターサービス、O&M(プラントの運転管理・メンテナンス)の受注の動きを記載しています(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
どんな事業か
株式会社荏原製作所は東京証券取引所に上場し、IFRS(国際財務報告基準)で連結決算を開示している企業です。決算短信では、5つの対面市場別の組織に移行したことを中期経営計画「E-Plan2025」の取り組みとして説明しています。セグメントごとに、建築設備や産業、オイル&ガスやLNG、水インフラ、廃棄物処理施設、半導体関連といった市場の動向を記載しています(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
環境セグメントについては、EPC(プラントの設計・調達・建設)とO&M(運転管理・メンテナンス)という言葉で受注の内訳を示しています。2025年12月期は公共向け廃棄物処理施設の基幹的設備改良工事や、長期包括運営契約を含む大型案件の受注があったと記載されています(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
収益の仕組み
決算短信の記載から、収益は次のように重なっていると読み取れます。
- 入り口:建築設備、産業、エネルギー、水インフラ、環境、半導体関連の市場で、製品や設備、プラントを受注します。
- 課金:製品の販売に加え、既存設備のメンテナンスやアフターサービス、プラントの運転管理(O&M)を受注します。
- 継続:既存の設備が稼働している限りメンテナンスなどの需要が生じ、決算短信にも「既存設備のアフター関連は堅調な需要が継続している」(インフラ)と記載されています。
ただし、サービスの需要は一定ではありません。エネルギーでは「メンテナンスの需要が一巡し通常レベルに戻る兆し」とされ、サービス分野の受注高は前期を下回りました。精密・電子では、顧客の工場稼働率の回復に伴いサービス&サポートの受注が前期を上回っています(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
数字で確かめる
- 全社:受注高9,496億83百万円(前期比10.4%増)、売上収益9,582億85百万円(同10.6%増)、営業利益1,138億2百万円(同16.2%増)、売上収益営業利益率11.9%(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。受注・売上・利益がそろって伸びた期であることが読み取れます。
- 精密・電子:売上収益3,422億67百万円(前期比23.0%増)、セグメント損益577億73百万円(同15.2%増)(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。5セグメントのなかで売上収益・損益の最も大きな柱であることが読み取れます。
- 環境:受注高1,353億92百万円(前期比89.1%増)、売上収益978億64百万円(同11.9%増)(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。受注が売上より大きく伸び、将来の売上の見通しにつながる受注が積み上がったことが読み取れます。
- エネルギー:受注高1,947億77百万円(前期比12.6%減)、売上収益2,178億45百万円(同3.5%増)、セグメント損益259億43百万円(同7.4%減)(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。大型案件のあった前期を受注が下回っても、売上収益は前期を上回ったことが読み取れます。
- 財政状態:資産総額1兆822億1百万円、親会社所有者帰属持分比率47.0%(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。投資と成長のための資産を厚い持分で支える構造であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「保守・消耗品によるリカーリング」の型で読むことができます。ポンプや設備、プラントは一度納めると長く使われ、その間にメンテナンスや運転管理の需要が生まれます。製品を売って終わりにせず、設備が稼働する間の関係を受注の対象にしている点が、収益の土台になっていると考えられます。
一方で、サービスの需要は設備の稼働状況や点検の周期、市場の投資の波に左右されます。決算短信でも、エネルギーのサービス分野は需要が一巡して前期を下回り、精密・電子は工場稼働率の回復で前期を上回るなど、同じ「サービス」でも動きが異なります。サービスを安定した収益と見なす場合も、市場ごとの周期を見ておく必要がある、というのがこの事例からの学びです。
また、環境セグメントでは、建設(EPC)だけでなく運営(O&M)、さらに長期包括運営契約へと、顧客との関係の期間を延ばす形が見られます。これらは公開情報にもとづくOtsumuの解釈であり、同社の経営方針を示すものではありません。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が納めた製品や成果物は、納品後にどんな保守・点検・運用の需要を生んでいるか。
- 納品後の対応は、売上として数えられているか。無償の対応として埋もれていないか。
- サービスの需要が増える時期と減る時期は、顧客ごとにどう異なるか。
小さく試すなら
- 過去の納品先を一覧にし、納品後1年以内に発生した問い合わせや追加対応を書き出す(1週目)。
- 対応を、無償で行ったものと有償で行ったものに分け、手間のかかった時間を概算する(1〜2週目)。
- 無償対応のうち、定期的に必要になりそうな内容を3つ選び、点検や保守の項目として整理する(2〜3週目)。
- 項目を既存の顧客2〜3社に見せ、条件と反応を記録して、次の提案書に反映するかを決める(4週目)。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社荏原製作所の5つの事業セグメントとサービス&サポート。参照資料:2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25