分類:企業事例 › ITサービス・BPO
この事例の要点
- Globant S.A.は、時間・工数課金(time-and-materials)を主な契約形態とするIT・デジタル開発の受託会社です。2025年に、AIを活用したサービスを月額の従量サブスクリプションで提供する「AI Pods」を導入しました(Form 20-F、2025年12月期)。
- 同社は、AI Podsが受け入れられるか、収益として持続するかは保証できないと自ら述べています。新しい課金モデルはまだ検証の段階にあります(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年12月期の売上高は2,454,877千米ドル(前期2,415,689千米ドル)で、IT専門職の人数は26,906人と前期の29,198人から減っています。売上と人数が同じ方向に動かなくなっている点が、課金設計を見直す背景として読めます(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Globant S.A.はルクセンブルクに本社を置き、ニューヨーク証券取引所(NYSE)にGLOBの銘柄で上場しています。ソフトウェア開発、デジタル製品の設計、マーケティング、業務変革などを企業向けに受託し、31か国で専門職を擁します(Form 20-F、2025年12月期)。
同社は2009年に導入した「Studio」と呼ぶ専門組織の単位でサービスを整理しています。2025年には、AI分野の専門性と業界の知見を組み合わせた「AI Industry Studios」や、AIエージェントの構築と管理のための基盤「Globant Enterprise AI(GEAI)」を打ち出しました(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
2025年12月期の同社サービスは、大半が時間・工数課金で、一部が固定価格契約です。ソフトウェアの販売やライセンスなどは、売上の限られた部分にとどまります。ここに2025年、AI Podsが加わりました(Form 20-F、2025年12月期)。
- 入り口:Studioを通じた受託。既存の取引先との継続的な案件が中心です。
- 課金(従来):専門職の時間単価。同社は、時間単価と人員構成が粗利益率を左右する要因だと説明しています。
- 課金(新規):AI Podsは、ソフトウェア開発、製品定義、デザイン、品質保証などをAIの能力で提供し、月額・トークン計量の定額課金を採るモデルです。同社の専門職が支え、GEAIが基盤になります。
- 継続:長期の取引先が支えています。上位10社は平均11年の取引です。
数字で確かめる
- 2025年12月期の売上高は2,454,877千米ドルで、前期2,415,689千米ドル、前々期2,095,939千米ドルから伸びました。ただし前期比の伸びは約1.6%(2,454,877÷2,415,689-1)で、前年の伸びより小さいことが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- IT専門職は2025年末に26,906人で、2024年末の29,198人から減少しました。売上高が伸びるなか人数が減っており、人数に比例して売上が増える形が前提ではなくなりつつあることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 営業利益は171,732千米ドルで、売上高に対する比率は7.0%です。2024年12月期は225,418千米ドル、9.3%でした。収益性が下がっていることが読み取れます。同社は別途、株式報酬などを除いた調整後営業利益373,272千米ドルも開示しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 最大の顧客の売上は212,483千米ドルで売上高の8.7%、上位10社では717,557千米ドルで29.2%です。10万米ドル超の顧客は944社あり、特定の顧客への依存は限定的で、取引は広く分散していることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 地域別では北米が1,333,403千米ドル(54.3%)、欧州が469,409千米ドル(19.1%)、中南米が492,537千米ドル(20.1%)です。欧州の比率が2023年12月期の14.8%から上がっており、地域の構成が変わっていることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。工数課金は、人員を増やせば売上が増える一方、AIが作業を肩代わりすると、同じ成果に必要な時間が減り、売上が縮むという構造を抱えます。成果物の量に近い単位(トークンや月額)で売る設計は、この矛盾を和らげる試みだと読めます。
ただし、同社は新モデルを工数課金の置き換えではなく「補完する」位置づけで説明しています。既存の大口取引先との関係を保ちながら、AIを前提にした契約を並走させ、受け入れられ方を見ていく進め方です。急に全面移行せず、顧客の反応を見て比率を決めるという現実的な設計と読めます。
トレードオフは、月額課金では、利用が少なければ収益が伸びにくく、AIの利用にかかる原価の管理も要る点です。利用量の見通しと原価の把握が、工数課金より重要になるはずです。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上は、担当者の作業時間に連動しすぎていないでしょうか。作業が効率化されたとき、売上は増えるでしょうか、減るでしょうか。
- 顧客が価値を感じているのは、投入した時間でしょうか、得られた成果でしょうか。
- 新しい課金方式を、既存の契約を壊さずに並走させるとしたら、どの顧客のどの業務から始められるでしょうか。
小さく試すなら
- 直近の案件を5〜10件選び、請求額と実際の作業時間、そのうち効率化できた時間を一覧にします。
- 顧客が「成果」と見なしている単位(納品物の件数、処理した件数など)を、顧客への聞き取りで決めます。
- その単位で月額または件数に応じた料金表の案を作り、既存の工数課金と並べて、顧客1〜2社に提示します。
- 2〜4週間で、顧客の反応と自社の原価の見通しを確認し、本格的に試すか、料金表を引き直すかを決めます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Globant S.A./IT・デジタル受託とAI Pods。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25