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Li Auto「レンジエクステンダー式EVと直営販売」に学ぶ車の売り方の事業設計

中国のLi Autoは、発電用エンジンを積む航続距離延長型EV(EREV)を、直営店と自前の充電網で届けています。納車台数が減った2025年に、収益と利益がどう動いたか、固定費の重い垂直統合型の設計をSEC提出の20-Fから確かめます。

この事例の要点

  • Li Autoは、発電用のエンジン(レンジエクステンダー)を積む航続距離延長型EV(EREV)と、バッテリーEV(BEV)を販売しています。販売は自社の直営店網で行い、製造は常州と北京の自社拠点で行っています(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 2025年の納車は406,343台で、2024年の500,508台から減りました。総収益は2024年の144.5十億人民元から2025年の112.3十億人民元に減っています(Form 20-F、2025年12月期)。
  • それでも2025年は1.1十億人民元の純利益を計上しました。営業損益は521.1百万人民元の損失です(Form 20-F、2025年12月期)。

どんな事業か

Li Auto Inc.はケイマン諸島の持株会社で、本社は北京の順義区にあります。事業は中国で、子会社と、契約で支配する変動持分事業体(VIE)を通じて行っています。米国の市場に上場し、SECにForm 20-Fを提出しています(Form 20-F、2025年12月期)。

同社は、2019年11月に最初の車種「Li ONE」でEREVの量産を始めたと説明しています。現在の車種は、家族向けのミニバン、Li Lシリーズの航続距離延長型SUV4車種、Li iシリーズのバッテリーEVのSUV2車種です。累計納車は2025年12月末で1,540,215台と記載しています(Form 20-F、2025年12月期)。

収益の仕組み

収益の大半は車の販売で、周辺の売上が加わります。

  • 入り口:高い人通りのあるモールや販売拠点に置いた直営店で、試乗と注文を受けます。2025年12月末で中国に548店でした。同社は、直営にすることで利用者との接点を自社でデジタル化できると説明しています。
  • 課金:車の販売収益が中心で、2025年は106.7十億人民元です。ほかに、アフターサービス、充電設備や部品の販売、会員サービス(Li Plus)などの「その他の売上・サービス」が5.6十億人民元でした。
  • 継続:自社の超急速充電ステーションを2025年12月末で3,907か所(充電口21,651)運営しており、使い続ける理由の一部になっています。ただし同社は、充電網の運営経験は限られると述べています。

数字で確かめる

  • 2025年の納車は406,343台で、2024年の500,508台、2023年の376,030台と並べると、年によって増減することが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 車両販売収益は2024年の138.5十億人民元から2025年の106.7十億人民元に減り、同社は納車台数の減少が主因と説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。収益が台数に強く連動していることが読み取れます。
  • 売上総利益は2024年の29.7十億人民元から2025年の21.0十億人民元に減りました。研究開発費は11.3十億人民元でほぼ横ばいでした(Form 20-F、2025年12月期)。売上が減っても、研究開発に使う額は維持していることが読み取れます。
  • 営業損益は、2024年の7.0十億人民元の黒字から、2025年は521.1百万人民元の赤字になりました。営業利益率は2024年の4.9%から2025年はマイナス0.5%です(Form 20-F、2025年12月期)。固定的な費用が重く、台数の減少が利益に直接響くことが読み取れます。
  • 純利益は2025年に1.1十億人民元でした。利息・投資収益が1.9十億人民元ある点が背景です(Form 20-F、2025年12月期)。本業以外の収益が純利益を下支えしていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は、「商品の形」と「届け方」の両方を自社で握る垂直統合の設計だと読めます。EREVは、充電が不安な利用者にも電気の走りを提供しようとする商品で、直営店と充電網は、その安心感を現場で伝え、使い続けてもらう仕組みです。接点を自社で持つため、利用者の好みや困りごとを商品に戻しやすくなります。同社が直営店を、利用者の声を集める入り口と位置づけている点も、その狙いと一致します。

一方で、この型は費用が固定的になりやすいと考えられます。直営店、工場、充電網、研究開発のどれも、台数が減ったからといってすぐには減らせません。2025年の数字は、台数が減ると売上総利益と営業損益がともに悪化した例として読めます。

つまり、接点と体験を握る強みと、固定費の重さが同時に生じる設計です。台数に頼る収益に加えて、継続的に入る収益をどれだけ育てられるかが論点になると、Otsumuは見ます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の商品で、顧客の不安を直接やわらげる体験を、自社で届けているか、他社に任せているか。
  • 販売の窓口を自社で持つ場合、そこで得た顧客の声を、どのような仕組みで商品に反映しているか。
  • 販売数が一時的に減ったとき、固定費のうち、動かせる部分と動かせない部分をどう分けているか。

小さく試すなら

  1. 1週目:顧客が購入前に抱く不安を、問い合わせや商談の記録から5つ書き出す。
  2. 2週目:そのうち最も多い不安を、体験や説明で解消する小さな施策(試用、事例の見せ方など)を1つ決める。
  3. 3週目:施策を一部の見込み客に試し、商談の進み方がどう変わるかを記録する。
  4. 4週目:費用を固定費と変動費に分け、売上が一定程度減った場合の利益の変化を簡単な表で試算する。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Li Auto Inc.「EREVと直営販売」(中国)。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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