← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

Maximus「政府プログラムの運営受託」に学ぶ、処理件数で稼ぐ成果連動型の事業設計

米国の政府機関向けに医療保険の加入手続きや障害診断の評価などを運営するMaximusの事例です。売上の54.4%を占める処理件数・成果連動の契約と、5.0年の残存期間を持つ受注残の関係を、Form 10-Kから確かめます。

分類:企業事例 › ITサービス・BPO

この事例の要点

  • Maximusは、米国の連邦・州政府などから、医療保険の加入・資格確認、臨床評価、技術サービスといった公共プログラムの運営を受託しています(Form 10-K、FY2025〔2025年9月30日終了年度〕)。
  • 売上の54.4%は、コール数・評価件数・加入者数などの指標に応じて支払われる成果連動型(performance-based)の契約から得ています(Form 10-K、FY2025)。
  • 受注残は153億ドルで、契約の平均残存期間は約5.0年と開示されています。長い契約が事業の見通しを支える一方、政府予算の変動に左右されることも同社は記載しています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

Maximus, Inc.は米国バージニア州法人で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。同社は1975年設立で、政府機関向けのテクノロジー活用型サービスの提供者であると自社を説明しています。主な顧客は米国の連邦政府と州政府で、英国、カナダ、中東でも事業を行っています(Form 10-K、FY2025)。

事業は3つのセグメントに分かれています。U.S. Federal Servicesは売上の56%で、メディケア関連の問い合わせ窓口の運営や、退役軍人省の障害診断(医療評価)の運営、技術サービスなどを担います。U.S. Servicesは売上の32%で、州・地方政府のメディケイド(低所得者向け医療保険)の加入支援や児童扶養などの運営を担います。Outside the U.S.は売上の11%で、英国の機能評価サービスや就労支援などを担っています。なお、同社はメディケイドのような制度で、最終的な資格判定は行わないと説明しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

同社は、報酬の受け取り方を4つに分類して開示しています。政策を実行する業務を、契約ごとに異なる支払条件で請け負う構造です(Form 10-K、FY2025)。

  • 成果連動型:コール数、評価件数、加入件数、維持している会員数などの指標で支払われます。就労支援では、求職者が継続して就職できたかという成果に応じた支払いもあります。
  • コストプラス型:発生した直接・間接コストに一定の利益を上乗せして支払われ、成果に応じた報奨が付く場合もあります。
  • 固定価格型:あらかじめ決めた金額で、取扱量が見通せる確立した業務に使われます。
  • 時間・材料型:時間単価と非労務費の実費で請求され、技術サービスの契約に多く見られます。

同社は、成果連動型や固定価格型は同社の負うリスクが高いぶん、一般に利益率が高くなると説明しています。また、契約には品質水準を下回った場合の減額が含まれることがあります(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • FY2025の売上高は5,431,276千ドル、営業利益は528,289千ドル(営業利益率9.7%)、希薄化後1株当たり利益は5.51ドルでした(Form 10-K、FY2025)。売上の規模に対し、営業利益率が9.7%である事業であることが読み取れます。
  • 契約種類別の売上は、成果連動型が2,954,395千ドル(54.4%)、コストプラス型が1,316,646千ドル(24.2%)、固定価格型が712,878千ドル(13.1%)、時間・材料型が447,357千ドル(8.2%)でした(Form 10-K、FY2025)。取扱量に応じて収益が動く契約が過半を占めることが読み取れます。
  • U.S. Federal Servicesの売上は3,067,691千ドルで前年比12.1%増、営業利益率は15.3%でした。一方、U.S. Servicesの売上は1,763,691千ドルで前年比7.7%減でした。同社は、前年のメディケイド資格再確認(redetermination)業務による取扱量の増加が一巡し、定常状態に戻ったためと説明しています(Form 10-K、FY2025)。取扱量連動の契約では、制度の動きで売上が上下することが読み取れます。
  • 受注残は15,327百万ドルで、セグメント別では連邦9,780百万ドル、州・地方3,916百万ドル、米国外1,631百万ドルです。契約の平均残存期間は約5.0年です(Form 10-K、FY2025)。長期の契約が将来の売上の土台になっていることが読み取れます。
  • 同社は、契約の見直しや終了による既存契約の減少が毎年、事業の約7%から10%に及ぶ傾向があり、新規・拡大した業務で置き換えてきたと記載しています(Form 10-K、FY2025)。受注残があっても、新たな受注を積み続ける必要があることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、業務受託(BPO)に、処理件数や成果で報酬が決まる課金の型を組み合わせたものと読めます。政府は、制度を設計しても、大量の問い合わせ対応、申請の確認、評価の実施といった運営の実務を自前で抱えにくい。この運営を受け持つことで、同社は制度の「実行」を担う役割を得ていると考えられます。

成果連動型が過半を占める設計は、取扱量が多いときに収益が伸びる一方、少ないときには固定的な人員や拠点のコストが重くなる性質があります。U.S. Servicesの減収は、その両面を示す例と読めます。同社が、臨床評価や技術サービスなど、別の種類の業務をポートフォリオに加えているのは、一つの制度の波に左右されにくくする動きとも読めます。

トレードオフは、収益の予見性と、政策・予算の変動への依存です。受注残が長くても、多くの契約は顧客の都合で解約できると同社自身が記載しています。つまり、契約の長さだけでなく、更新と置き換えで受注を積み上げ続ける力が、この型の持続性を決めると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が請け負っている業務のうち、時間や人数ではなく、処理件数や成果で価格を決められるものはどれでしょうか。
  • 取扱量が減ったとき、固定的に抱えている人員や設備の負担を、どう調整できるでしょうか。
  • 一つの顧客・制度・案件に偏った売上を、性質の違う業務で分散するには何が必要でしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社が受託している業務を3〜5件選び、現在の価格が時間・人数・固定額・件数のどれに基づくかを一覧にします。
  2. それぞれについて、1件あたりの処理コストと、月ごとの処理件数のばらつきを過去の実績から整理します。
  3. ばらつきが小さく、成果を顧客と合意しやすい業務を1件選び、件数または成果を基準にした料金案を作って、顧客候補の担当者と意見交換します。
  4. 2〜4週間のうちに、料金案が受け入れられるか、どの指標なら双方で測れるかを確認し、受け入れられなければ固定額と件数の組み合わせなど、リスクの分け方を見直します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Maximus, Inc. / 政府プログラムの運営受託。参照資料:Form 10-K(FY2025、2025年9月30日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗