この事例の要点
- Cloudflare, Inc.の2025年12月期の売上高(Revenue)は2,167,937千ドル(前期1,669,626千ドル)でした。営業損失(Loss from operations)は207,205千ドルです(Form 10-K、FY2025)。
- 同社は、契約顧客(Enterpriseプラン)、pay-as-you-go顧客、無料顧客という層の異なる顧客を持ちます。無料顧客は規模を生み、効率的なブランドマーケティングとなり、開発者や顧客、将来の従業員を引きつけると同社は説明しています(Form 10-K、FY2025)。
- 同社のネットワークは330を超える都市、125を超える国に広がり、13,000を超えるネットワークと相互接続しています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Cloudflareは、企業のアプリケーションやネットワークを安全かつ高速にし、個別のネットワーク機器を管理するコストと複雑さをなくすサービスを、自社のグローバルネットワークで提供しています。同社はこの領域を「Connectivity Cloud」と呼んでいます(Form 10-K、FY2025)。
製品は、Webサイトや APIを攻撃から守り高速化するアプリケーションサービス(WAF、Bot Management、DDoS対策、コンテンツ配信など)、Zero Trustと企業ネットワークのサービスを組み合わせたSASEプラットフォーム、Cloudflare Workersなどでサーバーレス・AIアプリケーションを構築する開発者向けソリューション、そして消費者向けサービスで構成されます(Form 10-K、FY2025)。
同社はネットワークを、すべての都市のすべてのサーバーですべてのサービスを動かす設計とし、汎用のハードウェアを使うことで容量を素早く安価に増やせると説明しています。同社はこのネットワークが海外での成長を後押ししてきたと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
収益は主に、ネットワークと製品へのアクセスのサブスクリプション販売から生まれます。契約顧客の契約期間は通常1年から3年で、基本料金に加えて利用量に応じた変動部分を含む場合があります。大口顧客では、期間中に一定額以上の利用を約束する「pool of funds」の形をとることもあります(Form 10-K、FY2025)。
pay-as-you-go顧客はWebサイトから購入し、ProやBusinessのプランを登録ドメインごとに契約します。Zero Trust製品は席(seat)単位、開発者向けソリューションはリクエスト数と実行時間で計測する従量制のプランで提供されています(Form 10-K、FY2025)。
費用面では、同社は研究開発とネットワークへの継続的な投資を事業モデルの要素に挙げています。大きな顧客基盤と大量のトラフィックを背景に、ISPのデータセンターに自社機器を置く合意を結ぶことで、帯域幅とコロケーションの費用を抑えていると説明しています。2025年12月期の売上原価は552,525千ドル、研究開発費は512,489千ドルでした(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 売上高2,167,937千ドル(前期1,669,626千ドル)(Form 10-K、FY2025)。前期から売上規模が大きく伸びたことが読み取れます。
- 売上総利益1,615,412千ドル(Form 10-K、FY2025)。売上原価が売上高に比べて小さく、ネットワークで提供するサービスの原価が抑えられていることが読み取れます。
- 営業費用合計1,822,617千ドル、うち販売・マーケティング費920,817千ドル(Form 10-K、FY2025)。売上総利益を上回る営業費用をかけ、特に顧客獲得に多くを投じていることが読み取れます。
- 営業損失207,205千ドル、当期純損失102,267千ドル(Form 10-K、FY2025)。成長投資を優先し、利益はまだ出ていない段階であることが読み取れます。
- 海外市場の売上比率51%(2024年49%、2023年48%)(Form 10-K、FY2025)。海外の比率が年々高まっていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。「フリーミアム」の型では、無料利用者にかかる費用をどう賄うかが成否を分けます。同社は、ネットワークの空き容量(idle capacity)を使って無料プランを提供していると説明しています。有料顧客の処理を優先しつつ余った容量を無料に回すため、無料利用者を増やすための追加費用が小さく抑えられると読めます。さらに無料利用者が生む多様なトラフィックは、脅威や不具合の早期発見、同社の言う「virtual quality assurance」につながり、ISPとの接続条件の改善にも役立つとされています。無料利用者が、ネットワークの価値を高める資源として位置づけられていると考えられます。
「従量課金」の観点では、開発者向け製品をリクエスト数と実行時間で課金し、契約顧客にも変動部分や「pool of funds」を設けています。使うほど支払う仕組みは、小さく始めた顧客が利用を広げたときに収益が自然に伸びる構造と考えられます。同社が既存顧客との関係拡大を成長戦略の柱に置いていることとも整合します。
トレードオフとして、無料の入口と大規模なネットワークへの先行投資は、規模が十分になるまで利益を圧迫します。2025年12月期も営業損失が続いており、同社は将来の収益性の時期は、成長戦略の成否や投資の規模・時期などに左右されると述べています。成長と利益のどちらを優先するかを、投資の段階ごとに判断し続ける必要がある型と読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の設備や人員に、空いている時間や容量はあるか。それを無料の提供に使えないか。
- 無料利用者が、有料顧客にとっての価値(品質改善、知見、評判)を生む仕組みになっているか。
- 小さく始めた顧客が利用を広げたとき、自然に売上が伸びる料金体系になっているか。
- 先行投資の回収時期を、どの指標で判断するかを決めているか。
小さく試すなら
- 自社の設備・人員・ツールの稼働状況を1週間記録し、空いている時間や容量を洗い出す。
- その空き容量で提供できる無料の小さなサービスを一つ設計し、2〜4週間公開する。
- 無料利用者の数、利用頻度、寄せられた要望や不具合の報告を記録する。
- 無料利用者から有料の相談や改善のヒントが得られれば継続し、負担だけが増えるなら対象を絞って再設計する。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Cloudflare, Inc. / ネットワーク・セキュリティ。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27