この事例の要点
- 同社は、クラウドベースのServiceNow AI Platformを中核に、IT、顧客対応、人事・法務・財務などの業務の流れをつなぎ自動化する製品群を提供していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年のTotal revenuesは$13,278 millionで、そのうちSubscriptionが$12,883 millionを占めます(Form 10-K、FY2025)。
- 契約済みでまだ売上になっていない金額(RPO)は$28.2 billionで、前年末から27%増えたとしています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
ServiceNowは、公的機関や民間企業に向けて、AIを統制・保護・管理しながら業務の流れをデジタル化するソリューションを提供していると説明しています。中核はServiceNow AI Platformで、AI、データ、ワークフローの3つの機能を一つのプラットフォームにまとめています。AI機能のNow Assistでは、同社の言語モデルのほか第三者や顧客独自のモデルも選べるとしています(Form 10-K、FY2025)。
製品は、Technology、CRM and Industry、Core Business、Creator and Otherの4つの領域に分けられています。TechnologyはITサービス管理(ITSM)やIT運用管理(ITOM)、資産管理など、Core Businessは人事・法務・財務・サプライチェーン・施設管理の業務を支えます。Platformの大型アップグレードを毎年2回行うとしています(Form 10-K、FY2025)。
また、Moveworks, Inc.の買収により、企業内検索と対話型の仮想エージェントの技術をPlatformに統合したと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
売上はSubscriptionとProfessional services and otherの2つに分かれます。同社は一般に複数年のサブスクリプション契約を結ぶとし、顧客は契約期間の終わりに更新するのが通常だと説明しています。既存顧客に追加の製品を販売した際に、契約の満了日をそろえるため早めに更新する場合もあるとしています(Form 10-K、FY2025)。
米国連邦政府とは12か月契約が増えており、予算執行の時期により9月末の四半期に契約が集中すると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
費用面では、損益計算書にSubscriptionとProfessional services and otherそれぞれの売上原価、Sales and marketing、Research and development、General and administrativeが示されています。資金面では、12月末の四半期に契約が多いことから3月末の四半期に回収が多くなるとしています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- Total revenuesは$13,278 millionで、前年の$10,984 millionから増えました。うちSubscriptionは$12,883 million、Professional services and otherは$395 million(Form 10-K、FY2025)。売上のほとんどが継続課金であることが読み取れます。
- Gross profitは$10,295 million、Income from operationsは$1,824 million、Net incomeは$1,748 million(Form 10-K、FY2025)。売上原価は小さい一方、営業費用が厚いことが読み取れます。
- Sales and marketingは$4,388 million、Research and developmentは$2,960 million(Form 10-K、FY2025)。顧客獲得と製品開発に大きく投資していることが読み取れます。
- RPOは$28.2 billionで、その46%が今後12か月に計上されるcRPOです。RPOは27%、cRPOは25%増えました(Form 10-K、FY2025)。将来の売上の見通しが契約で積み上がっていることが読み取れます。
- ACVが$5 millionを超える顧客は603社で、前年の502社から増えました(Form 10-K、FY2025)。大口の顧客が増えていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。サブスクリプションの型は、顧客が毎年契約を更新し、さらに追加で買い足していくことで成り立ちます。同社が既存顧客への追加販売の際に契約の満了日をそろえると説明している点は、製品を一つずつ売り切るのではなく、一つのプラットフォーム上に使う範囲を広げてもらう設計だと読めます。
席数課金(ユーザー数課金)の観点では、今回参照した資料は価格の決め方そのものを詳しく述べていません。ただ、更新率の定義で「価格やユーザー数の変更」を除くとしていることから、契約額がユーザー数とも結びついていると読めます。部門をまたいで使う人が増えるほど、契約額が伸びる余地が生まれると考えられます。
裏側で必要な仕事は、年2回の大型アップグレードを続ける開発と、大企業の既存システムを置き換えずにつなぐ統合の知見だと考えられます。トレードオフは、Sales and marketingとResearch and developmentの費用が大きく、売上の大半を占める継続収益があって初めて営業利益が残る点です。契約の季節性による現金回収の偏りにも備える必要があると読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の顧客は、最初に導入した用途から、どの部門・どの業務へ利用を広げられるでしょうか。
- 契約の満了日や更新の時期を、追加販売の機会として設計できているでしょうか。
- 契約済みでまだ売上になっていない金額を、将来の見通しとして把握しているでしょうか。
- 課金の単位(利用者数、部門数、業務数など)は、顧客が得る価値の広がりと連動しているでしょうか。
小さく試すなら
- 既存顧客の上位数社について、現在の利用部門・利用者数・契約満了日を一覧にします。
- そのうち2〜3社に、別部門での利用を想定した追加提案を作り、満了日をそろえる更新案と一緒に提示します。
- 2〜4週間で、追加提案への反応(打ち合わせの設定、試用の申し込み)と、懸念点を記録します。
- 追加の利用が契約額の増加につながる見込みが確認できれば、課金単位と更新時期の標準的な設計に進みます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:ServiceNow, Inc. / ServiceNow AI Platform(業務ワークフローのクラウド)。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27