この事例の要点
- 同社は、自社開発・直接販売にこだわり、製品開発・販売・サービスを一体で行う体制で、統合業務ソフトウェア「OBIC7シリーズ」を提供していると説明しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 2026年3月期の売上高は135,209百万円(前期比11.5%増)、営業利益は88,823百万円(同13.3%増)でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 外部顧客に対する売上高は、運用支援・保守などのシステムサポート事業が715億8百万円で、システム構築のシステムインテグレーション事業の552億50百万円を上回っています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
同社の主力は、会計を中心に統合的に情報を管理するERPシステム「OBIC7シリーズ」です。製造・流通・サービス・金融など、さまざまな業種・業界の大手・中堅企業から、システム構築の引き合いが強まったとしています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
事業は、システムインテグレーション事業、システムサポート事業、オフィスオートメーション事業の3つのセグメントで構成されます。システムインテグレーション事業では大手・中堅企業への新規顧客開拓が進み、「OBIC7シリーズ」のシステム構築売上が堅調に推移しました。システムサポート事業では、顧客の増加に伴い、クラウドソリューションを中心にソフトウェアの「運用支援・保守サービス等」が好調だったとしています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
クラウドサービスは自社運営のクラウドセンターで提供しています。同社は、自社開発の製品を直販体制で届ける「ワンストップ・ソリューション・サービス」を基軸に、顧客の潜在的ニーズを捉える「製販一体体制」の強みを活かすと説明しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
お金の入り口は大きく2段階に分かれます。最初は、新たな顧客に「OBIC7シリーズ」を導入するシステム構築の売上で、システムインテグレーション事業に計上されます。導入後は、クラウドソリューションを中心とした運用支援・保守サービスなどの売上が、システムサポート事業に計上されます(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
同社は、大手・中堅企業の顧客が増えたことをシステムサポート事業が好調だった理由に挙げています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
費用については、クラウド関連施設などの設備増強、ビジネスモデル特許の登録・出願、健康経営の取組を先行投資として続けているとしていますが、今回参照した公開資料には原価や販売費などの費用の内訳は示されていません。
数字で確かめる
- 売上高は135,209百万円(前期比11.5%増)、営業利益は88,823百万円(同13.3%増)、売上高営業利益率は65.7%(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上の多くが利益として残る事業であることが読み取れます。
- システムサポート事業の外部顧客に対する売上高は715億8百万円(前期比13.5%増)、営業利益は528億96百万円(同15.2%増)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。導入後の継続的なサービスが最大の収益源であることが読み取れます。
- システムインテグレーション事業の外部顧客に対する売上高は552億50百万円(前期比9.8%増)、営業利益は329億82百万円(同10.3%増)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。新規の導入も伸び続けていることが読み取れます。
- 営業活動によるキャッシュ・フローは737億46百万円(前期比17.4%増)、投資活動によるキャッシュ・フローは20億22百万円の減少(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。設備投資が小さく、稼いだ現金の多くが手元に残る構造が読み取れます。
- 2027年3月期の業績予想は、売上高148,700百万円(前期比10.0%増)、営業利益98,000百万円(同10.3%増)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。同社が引き続き増収増益を見込んでいることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。直販営業の型は、自社の営業が顧客の業務を深く理解し、その場で提案から導入まで責任を持てるときに成り立ちます。同社が「製販一体体制」で顧客の潜在的ニーズを捉えると説明している点は、作る人と売る人が近いことで、提案の中身と製品の改善がつながりやすくなる設計だと読めます。
保守契約の観点では、システムサポート事業の売上高がシステムインテグレーション事業を上回り、伸び率も高いことが重要だと考えられます。会計を中心とする基幹システムは一度導入すると日々の業務に組み込まれるため、導入した顧客が運用支援・保守の顧客として残り続け、新規導入のたびに継続収益の土台が積み上がる構造と読めます。自社運営のクラウドセンターは、この継続的なサービスを自社で提供するための基盤と考えられます。
裏側で必要な仕事は、法制度の改定に合わせて製品を更新し続けることと、導入後の運用を支えるサポート体制の維持だと考えられます。同社も「政府の進める制度改定へ的確に対応すること」を挙げています。トレードオフは、直接販売にこだわる分、営業できる顧客の数が自社の人員に左右されると考えられる点です。そのぶん、大手・中堅企業との一社ごとの関係を深く長く保つことで補っていると読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上のうち、一度きりの導入・納品と、その後に続く継続的なサービスの比率はどうなっているでしょうか。
- 導入した顧客が、そのまま保守や運用支援の顧客として残る流れを設計できているでしょうか。
- 作る人と売る人が顧客の声を共有する仕組みはあるでしょうか。
- 法制度や業務ルールの変化を、継続契約の価値として顧客に届けられているでしょうか。
小さく試すなら
- 過去に導入・納品した顧客を一覧にし、その後も保守や運用支援で取引が続いている顧客と、途切れた顧客に分けます。
- 取引が途切れた顧客から3社ほど選び、導入後に困っていることを聞き取ります。
- 聞き取った内容をもとに、月額の運用支援メニューの案を作り、2〜4週間で数社に提示します。
- 契約の意向や価格への反応が得られれば、新規の導入提案に最初から運用支援を組み込む形に進みます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社オービック / 統合業務ソフトウェア「OBIC7シリーズ」の自社開発・直接販売。参照資料:2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27