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On Holding AG「ランニングシューズの直販と卸の二本立て」に学ぶ高付加価値ブランドの事業設計

スイス発のランニングシューズ企業On Holdingが、卸と直販を並行させて拡大する事業設計を学びます。純売上30億1,400万スイスフランと直販・卸の内訳を、米国SEC提出のForm 20-Fから確かめます。

分類:企業事例 › 食品・消費財

この事例の要点

  • On Holding AGは、スイス・チューリッヒに本社を置き、ニューヨーク証券取引所に上場する企業です。フットウェア、アパレル、アクセサリーの設計と販売を行い、中心はフットウェアです(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 2025年の純売上は30億1,400万スイスフランで、前年比30.0%増。内訳は直販(DTC)が12億6,050万スイスフラン、卸が17億5,340万スイスフランでした(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 売上総利益率は62.8%(前年は60.6%)。卸が総売上の58.2%を占めつつ、直販も33.7%増と伸びており、二つの販路を並行させる設計が読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。

どんな事業か

On Holding AGはスイスのチューリッヒに本社を置き、Class A普通株式をニューヨーク証券取引所(ティッカー:ONON)に上場しています。事業はフットウェア、アパレル、アクセサリーの設計と流通で、フットウェアが最も大きな割合を占めます。技術面では「CloudTec」「Speedboard」などを商標・特許として挙げ、チューリッヒにLightSprayの生産施設を開設したと説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。

製品は第三者の製造業者が生産しており、2025年はフットウェアの約90%がベトナム、約10%がインドネシアで製造されました。地域別の2025年の売上構成は、米州57.7%、欧州・中東・アフリカ25.3%、アジア太平洋17.0%です。ブランドの発信にはロジャー・フェデラー氏をブランドパートナーとして、アスリートや著名人、インフルエンサー(同社は「アンバサダー」と呼ぶ)を活用しています(Form 20-F、2025年12月期)。

収益の仕組み

収益は商品販売で、販路は卸と直販の二本です。卸は小売店を通じて広い接点を作り、直販は自社の店舗とEコマースで顧客と直接つながります。

  • 入り口:卸先の小売店、自社EC、自社直営店、アスリートやインフルエンサーによる発信。
  • 課金:製品の販売。卸は小売店への販売、直販は顧客への直接販売で、それぞれ別の売上区分として開示されています。
  • 継続:シューズからアパレル・アクセサリーへの商品群の拡大と、新しい技術(LightSprayなど)の投入。
  • 生産:ほぼすべての製品を第三者製造業者に委託する。

数字で確かめる

  • 純売上:2025年は30億1,400万スイスフランで、前年の23億1,830万スイスフランから30.0%増(為替一定で35.6%増)でした(Form 20-F、2025年12月期)。高い成長が続いていることが読み取れます。
  • 直販の純売上:12億6,050万スイスフラン(前年は9億4,280万スイスフラン、33.7%増)。総売上に占める割合は約41.8%です(12億6,050万÷30億1,400万、Otsumuの計算)。直販が大きな柱に育っていることが読み取れます。
  • 卸の純売上:17億5,340万スイスフラン(前年は13億7,550万スイスフラン、27.5%増)で、総売上の58.2%を占めました(Form 20-F、2025年12月期)。卸も二桁の成長を維持していることが読み取れます。
  • 売上総利益率:62.8%で、前年の60.6%から上昇しました(Form 20-F、2025年12月期)。卸比率が高くても高い粗利率を保てていることが読み取れます。
  • 調整後EBITDA:5億6,700万スイスフラン(前年は3億8,760万スイスフラン、46.3%増)。直営の小売拠点は2025年末に67か所で、うち38か所が香港を含む中国です(Form 20-F、2025年12月期)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。Onの設計は、卸の幅広い露出と、直販の顧客接点・粗利を両立させる「二本立て」と読み取れます。卸だけでは顧客データと価格の主導権が弱くなり、直販だけでは到達できる人が限られます。それぞれが成長しているという数字は、片方が片方を食い合う関係ではなく、役割を分担していることを示唆しています。

もう一つの特徴は、技術と製造の使い分けです。製造は第三者に委託し、自社は設計、技術開発、ブランドの発信に集中しています。独自の技術名や特許を前面に出すことで、価格を下げずに売る根拠を作る設計と考えられます。62.8%という売上総利益率は、そうした価格設計が機能していることの表れと読めます。

留意点として、売上の過半を占める卸は、卸先の在庫方針や取引条件に影響されます。また製造は特定の国に集中しており、供給地の変化がリスクになり得ます。成長が速いほど、販路と生産地の分散が課題になると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 卸や代理店経由と直販を、役割を分けて両立させる設計に自社は取り組めているか?
  • 価格を下げずに売るための「技術」や「物語」の根拠を、顧客に伝わる形で持っているか?
  • 直販の顧客データを、卸先への提案や商品開発にどう活かせるか?

小さく試すなら

  1. 1週目:自社の主力商品について、販路別(卸・直販)の売上と粗利、購入者の層を一覧にする。
  2. 1〜2週目:直販限定の商品または色を一つ決め、自社サイトで先行販売の案内を作る。
  3. 2〜3週目:購入者に簡単なアンケートを取り、購入理由と使用場面を集める。
  4. 3〜4週目:集めた声を卸先への提案資料に反映し、販路別の反応を比べて継続を判断する。

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資料の位置づけ

企業・サービス:On Holding AG(スイス)のランニングシューズ等の卸・直販。参照資料:米国SEC提出のForm 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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