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インタビュー対象者の集め方:リクルーティングの方法と謝礼の考え方

インタビュー対象者は、仮説から条件を決め、複数の経路で集め、スクリーニングで絞るのが基本です。BtoB・BtoC別の集め方、スクリーニング設問の作り方、謝礼の決め方、日程調整までの準備とよくある失敗を解説します。

顧客インタビューの質は、質問の上手さよりも「誰に話を聞けたか」で決まります。インタビュー対象者の集め方で大切なのは、知り合いや協力的な人ではなく、検証したい仮説の当事者を、条件を決めて選ぶことです。そのために、対象者の条件を先に文章にし、集める経路を複数用意し、スクリーニング(事前の選別)で条件に合う人だけに絞り、謝礼は相手の時間の価値と依頼の重さから決める、という順番で進めます。

BtoBとBtoCでは、対象者がいる場所も、声をかける方法も、謝礼の考え方も異なります。BtoBでは担当者の役職や社内の立場が重要になり、会社の規程で謝礼を受け取れないこともあります。BtoCでは集めること自体は比較的容易な一方、条件に合わない人や、謝礼目当てで回答を合わせる人が混ざりやすくなります。

この記事は、新規事業の顧客検証を担当する方、プロダクトの企画者、UXリサーチを始めたい方に向けて、インタビュー対象者のリクルーティングの手順、BtoB・BtoC別の集め方、スクリーニングの設計、謝礼の考え方、日程調整と当日までの準備、よくある失敗をまとめます。

インタビュー対象者の集め方で最初に決めること

検証したい仮説から対象者の条件を書く

対象者を集める前に、インタビューで何を確かめたいのかを明確にします。仮説が決まれば、話を聞くべき人の条件も決まります。

例えば「中小企業の経理担当者は、毎月の請求書の発行に半日以上かけており、その作業を負担に感じている」という仮説を確かめたいなら、対象者の条件は次のようになります。

  • 従業員数がおおむね一定範囲の企業に勤めている
  • 経理業務を担当し、請求書の発行を自分で行っている
  • 毎月一定数以上の請求書を発行している
  • 経理専用のシステムではなく、表計算ソフトや汎用のツールで作業している

条件は「必須条件」と「あると望ましい条件」に分けておきます。社内ワークショップなどで検証計画を作った場合は、計画の「対象とする顧客」の欄がそのまま出発点になります(新規事業ワークショップの設計)。必須条件を満たさない人に話を聞いても、仮説の検証には使えません。一方、望ましい条件まで全員に求めると、集めるのが難しくなります。

何人に話を聞くかを決める

人数は、検証の段階と目的によって変わります。課題の有無を確かめる初期の段階では、条件を満たす人に順に話を聞き、新しい発見がほとんど出なくなったところで一区切りとする考え方が一般的です。対象者の属性に幅を持たせたい場合(企業規模別、業種別など)は、属性ごとに数名ずつ確保できるように計画します。

集めた人のうち一定数は、日程が合わない、当日に欠席する、話してみたら条件に合わなかった、ということが起こります。必要な人数より多めに候補者を確保しておくのが現実的です。

BtoBのインタビュー対象者の集め方

BtoBでは、話を聞きたい人が企業の中の特定の役割にいるため、「その役割の人にどう届くか」を考えます。

経路向いている場面注意点
既存顧客・取引先自社の顧客層と想定顧客が重なる場合営業関係が影響して本音が出にくい。売り込みでないことを明確にする
社員や役員の人脈特定の業界や役職の人に早く会いたい場合紹介者への遠慮で好意的な回答に偏りやすい
SNS・ビジネス向けSNSでの直接連絡特定の職種の人を探す場合返信が得られる割合は高くない。依頼文の具体性が重要
業界団体・勉強会・展示会業界の実務者にまとめて接触したい場合場の目的に合った声のかけ方をする
リサーチ会社・リクルーティングサービス条件が明確で、自力で集めにくい場合費用がかかる。スクリーニング条件を自社で設計する
自社サイト・メディアでの募集既に読者や見込み客の接点がある場合自社に関心がある人に偏る

既存顧客に声をかけるときの注意

既存顧客は最も声をかけやすい経路ですが、注意点もあります。営業担当者を通じて依頼すると、相手は「新しい商品を売り込まれるのでは」と警戒したり、今の取引関係を気にして否定的なことを言いにくくなったりします。

依頼の際は、目的が意見を聞くことであり、販売の場ではないこと、話した内容が取引条件に影響しないことを伝えます。可能であれば、インタビュー自体は営業担当者ではなく、事業開発や企画の担当者が行う方が、率直な話を引き出しやすくなります。

直接連絡の依頼文の書き方

面識のない相手に依頼する場合、依頼文の内容が返信率を大きく左右します。次の要素を短く含めます。

  • 自分が何者で、なぜ相手に連絡したのか(相手の職種や発信内容に触れる)
  • 何について聞きたいのか(業務の具体的なテーマ)
  • 所要時間と形式(オンラインで30〜45分など)
  • 謝礼の有無と内容
  • 話した内容の扱い(個人や会社名を公表しないことなど)
  • 売り込みではないこと

「新規事業についてご意見をください」のような漠然とした依頼より、「請求書の発行業務について、普段どのように進めているかを伺いたい」のように、相手が自分の経験を話せばよいと分かる依頼の方が、応じてもらいやすくなります。

具体的な場面の例:建設業の現場監督に話を聞きたい

架空の例として、建設現場の安全管理を支援するサービスを検討しているチームを考えます。現場監督は日中は現場にいて、パソコンの前にいる時間が短く、SNSでの直接連絡には反応が得にくい相手です。

チームは、自社の既存顧客である建材の販売店に協力を依頼し、販売店の営業担当者を通じて現場監督を紹介してもらいました。依頼の際には「新しい商品の売り込みではなく、安全管理の実態を伺いたい」ことを文面で明確にし、インタビューは現場が終わった夕方の30分、電話でも可という形にしました。スクリーニングでは、担当している現場の数と、安全書類の作成を誰が行っているかを確認し、書類作成を自分で行っている人を優先しました。

結果として、紹介を受けた現場監督の中には書類作成を事務担当者に任せている人も含まれていたため、チームは次の回から事務担当者にも話を聞く計画に切り替えました。対象者の条件は、集めながら見直してよいものですが、見直した場合はその理由と、どの回から条件が変わったかを記録しておきます。

BtoCのインタビュー対象者の集め方

BtoCでは、対象者の母数が多いため、集めること自体よりも、条件に合う人を見極めることの方が難しくなります。

主な経路は次の通りです。

  • SNSでの募集:自社や担当者のアカウントで募集を告知します。告知の文面で条件を細かく書きすぎると、条件に合わせて回答する人が出るため、詳細な条件はスクリーニングで確認します。
  • 知人の紹介(知人本人は対象外にする):知人から、条件に合いそうな人を紹介してもらいます。知人本人は自分に気を使うため、対象から外す方が無難です。
  • コミュニティやサークル:趣味や子育て、特定の生活課題に関するコミュニティに、運営者の許可を得て募集を出します。
  • リサーチ会社のモニター:条件を指定して対象者を集めてもらいます。インタビュー慣れした人が含まれることがあるため、スクリーニングの設問を工夫します。
  • 既存の顧客リスト:既に自社の商品を使っている人の中から募集します。自社の商品に好意的な人に偏る点を考慮します。問い合わせや商談の記録から対象者の候補を探す方法は問い合わせ・商談記録から新規事業の種を探す方法も参考になります。

BtoCでは特に、「家族の中で誰が意思決定をしているか」「実際にお金を払っているのは誰か」が重要になる商材があります。例えば子ども向けのサービスなら、利用者は子どもでも、選ぶのは保護者です。誰に話を聞くべきかを、利用者・意思決定者・支払者に分けて整理しておくと、対象者の条件がぶれません。

具体的な場面の例:共働き世帯の夕食づくりについて話を聞きたい

別の架空の例として、共働き世帯向けの食事サービスを検討しているチームを考えます。SNSで募集したところ多くの応募がありましたが、スクリーニングで「平日の夕食を自分が主に準備している日数」「直近1週間の夕食の準備方法」を聞いたところ、実際に平日の夕食を主に準備している人は応募者の一部にとどまりました。

チームは、自由記述で直近の具体的な出来事を書いてくれた人を優先して選び、利用者と支払者が異なる家庭については、可能であれば両方から話を聞くようにしました。

また、応募者の中には短期間に複数の調査に参加している人が見られたため、チームは直近の調査参加歴を確認する設問をスクリーニングに追加しました。SNS経由の募集は集まりやすい分、こうした確認の手間を見込んでおく必要があります。

スクリーニングの設計:条件に合う人だけに絞る

スクリーニングとは、応募者や候補者に事前の質問に答えてもらい、条件に合う人を選ぶ工程です。この工程を省くと、話を聞いてみたら条件に合わなかった、という時間の無駄が発生します。

スクリーニング設問の作り方

  1. 必須条件を事実の質問に置き換える:「請求書の発行で困っていますか」ではなく、「毎月、何枚程度の請求書を発行していますか」「請求書の作成にどの道具を使っていますか」のように、事実を聞きます。
  2. 答えを誘導しない:選択肢の中に正解が分かるものを入れないようにします。条件に合う選択肢だけでなく、合わない選択肢も同じように並べます。
  3. 関係のない設問を混ぜる:何を条件にしているかが分からないように、関係のない設問も含めます。特にBtoCで謝礼を目当てに応募する人が、条件を推測して回答を合わせることを防ぎます。
  4. 自由記述を一問入れる:「最近、その作業で困ったことを一つ教えてください」のような設問を入れると、具体的に書ける人かどうか、当事者かどうかが見えてきます。
  5. 除外条件を確認する:競合企業の社員、調査業界の関係者、直近で同じテーマの調査に参加した人などは除外します。

選考の判断基準

判断の観点選ぶ避ける
当事者性自分で作業し、具体的な頻度や手順を答えられる他人の作業として説明する、頻度が答えられない
自由記述の具体性場面、使っている道具、困った出来事が書かれている「特になし」「便利になればうれしい」など抽象的
属性のバランス計画した属性ごとの人数に収まる同じ属性ばかりに偏る
回答の一貫性設問同士の回答に矛盾がない頻度と使用道具の回答が噛み合わない

謝礼の考え方

謝礼の金額について一律の相場を示すことはできませんが、どう決めるかの考え方は整理できます。謝礼は「相手の時間と負担への対価」として、次の要素から決めます。

  • 所要時間:インタビューの時間に加え、事前の準備や移動の時間もかかる場合はそれも含めて考えます。
  • 相手の立場と専門性:専門職や経営層など、時間の価値が高い相手や、見つけにくい相手ほど、依頼の負担は重くなります。
  • 依頼の内容:話を聞くだけか、試作品を操作してもらうか、自宅や職場の様子を見せてもらうか、日記のような継続的な記録をお願いするかで負担が変わります。
  • 集めにくさ:条件が厳しく、該当者が少ない場合は、謝礼を手厚くしないと応じてもらえないことがあります。
  • 予算と人数:予定する人数と全体の予算から、一人あたりに使える上限を逆算します。

謝礼の渡し方で気をつけること

  • BtoBの相手は、会社の規程を確認する:取引先や公務員などは、謝礼を受け取れない場合があります。その場合は、謝礼を辞退してもらうか、寄付などの別の形を相談します。
  • 形式を選べるようにする:現金の振込、電子ギフト、商品券など、相手が受け取りやすい形式を用意します。振込の場合は口座情報の取り扱いにも注意します。
  • 事前に明示する:謝礼の内容と支払いの時期は、依頼の段階で伝えます。インタビュー後に条件を変えることは避けます。
  • 経理処理を確認する:謝礼の会計処理や、相手側の税務上の扱いについては、自社の経理担当者や専門家に確認してください。

謝礼を出さずに協力を得られる場合もあります。既存顧客で、新しいサービスができることにメリットを感じている相手や、自分の業界の課題解決に関心がある相手は、謝礼より「結果を共有してもらえること」に価値を感じることもあります。

日程調整から当日までの準備

対象者が決まったら、日程調整と事前の連絡を行います。この工程を丁寧に行うかどうかで、欠席率と当日の話しやすさが変わります。

  1. 日程調整の手段を用意する:候補日時を複数提示するか、日程調整ツールで相手に選んでもらいます。
  2. 確定の連絡に必要な情報をまとめる:日時、所要時間、オンライン会議のリンクや場所、話を聞きたいテーマ、謝礼、録音や記録の扱いを一通の連絡にまとめます。
  3. 同意を得る:録音・録画をする場合や、発言を社内で共有する場合は、その範囲を伝えて同意を得ます。個人情報の取り扱いは、自社の規程や専門家の助言に沿って決めてください。
  4. 前日にリマインドを送る:日時と接続方法を改めて伝えます。
  5. 当日の欠席に備える:欠席が出た場合に連絡する予備の候補者を用意しておきます。
  6. 終了後にお礼と謝礼の手続きを行う:当日中にお礼の連絡を送り、謝礼の手続きを案内します。

候補者の情報、連絡の履歴、スクリーニングの回答、日程、謝礼の支払い状況は、一つの表で管理しておくと漏れを防げます。同じ人に何度も依頼する可能性がある場合は、過去の参加履歴も残しておきます。MVPを公開した後は、利用者の中から対象者を選び、利用ログと組み合わせて話を聞く方法もあります(MVP公開後のフィードバックの集め方)。継続的に意見をもらう関係に発展させる方法は顧客諮問会の作り方と運営を参考にしてください。

よくある失敗と避け方、準備のチェックリスト

よくある失敗

  • 話しやすい知り合いばかりに聞く:知り合いは好意的に答えがちで、仮説が正しいという誤った確信を生みます。知り合いは紹介者として頼り、本人は対象から外します。
  • 条件を決めずに集め始める:集まった人に合わせて仮説を変えてしまい、何を検証したのか分からなくなります。条件は集める前に文章にします。
  • スクリーニングで条件を見せてしまう:条件が推測できる設問だけを並べると、条件に合わせた回答が集まります。事実を聞く設問と、関係のない設問を組み合わせます。
  • 謝礼の扱いを後回しにする:依頼の後に謝礼の条件を変えたり、支払いが遅れたりすると、信頼を失い、次の依頼が難しくなります。
  • 一つの経路に頼る:特定の経路からの対象者は、似た特徴を持ちやすくなります。経路を複数組み合わせ、偏りを確認します。

準備のチェックリスト

  • 検証したい仮説が文章で書かれている
  • 対象者の必須条件と望ましい条件、除外条件が決まっている
  • 必要な人数と、欠席に備えた予備の人数が決まっている
  • 集める経路を複数用意している
  • スクリーニング設問が事実を聞く形になっている
  • 謝礼の内容、渡し方、支払い時期が決まっている
  • 録音や記録、個人情報の扱いについて同意を得る準備ができている
  • 候補者と連絡の状況を管理する表がある

よくある質問

Q. 社内の人にインタビューしても検証になりますか?

社内に想定顧客と同じ業務をしている人がいる場合、課題の理解を深める練習や、質問の準備としては役立ちます。ただし、社内の人は自社の構想を知っていたり、立場上好意的に答えたりするため、それだけで仮説が検証できたと判断するのは避け、社外の当事者にも必ず話を聞きます。

Q. リサーチ会社を使うべきか、自分で集めるべきか迷っています。

条件が明確で、自力では接点のない層に話を聞く必要がある場合は、リサーチ会社が有効です。一方、初期の課題確認で、条件そのものを探りながら進めたい段階では、自分で集めて話を聞く方が柔軟に動けます。どちらの場合も、スクリーニングの条件は自社で設計します。

Q. 謝礼なしで依頼するのは失礼でしょうか?

一概に失礼とは言えません。既存顧客や、テーマに強い関心を持つ人は、謝礼がなくても協力してくれることがあります。ただし、謝礼を出さない場合でも、所要時間を短くする、結果を共有する、といった形で相手の負担と得られるものの釣り合いを考えることが大切です。

Q. オンラインと対面のどちらがよいですか?

日程の調整しやすさと地域の広さではオンラインが有利です。一方、職場や家庭での作業の様子、使っている道具や紙の書類を見たい場合は、対面での訪問が有効です。初期の聞き取りはオンラインで広く行い、特に深く知りたい相手には訪問をお願いする、という組み合わせもよく使われます。

Otsumuに相談できること

インタビュー対象者のリクルーティングは、仮説と条件が明確で、既存顧客や人脈など接点のある経路があれば、自社で十分に進められます。この記事のスクリーニングの作り方と準備のチェックリストを使えば、最初の数人から始めることができます。

一方で、検証すべき仮説がまだ整理できていない、想定顧客との接点がまったくない、話を聞いても好意的な反応ばかりで判断材料にならない、という状況では、仮説の整理とインタビューの設計を見直す必要があります。この段階で外部の視点を入れると、遠回りを減らせます。

Otsumuは新規事業開発コンサルティングで、仮説の整理、対象者の条件とスクリーニングの設計、インタビューの実施と分析を伴走します。4週間で顧客への聞き取りと検証をまとめて進めたい場合は、顧客検証 Sprint(98万円〜・税別)として、対象者の選定から検証結果の整理までを一つの区切りで実施することもできます。

「何人に、どんな人に話を聞けばよいか」という段階からでもご相談いただけます。30分の無料相談で、検討中のテーマをお聞かせください。

この記事のテーマに最も近い支援は、アイデア検証・顧客インタビュー支援です。

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この記事について

Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。法務・税務・会計などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01

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